一方で、診断はついていないけれど、遅刻やミスが異様に多いというような問題が生じている場合(事例性)には、上司として対応し、適宜解決していく必要があるでしょう。
したがって、職場で⽣じている問題(事例性)について、本⼈と上司や部署がそれぞれなにに困っているかについて、コミュニケーションを重ねながら一緒に整理していくことが大切です。
事務員として働くQさんのケース
Qさんは、営業アシスタントとして営業部員の精算管理や書類作成などをしています。今の職場で働き始めて1年近く経ちますが、彼女がつくった書類には、押印やサインの漏れ、入力ミスなど、常になにかしらのミスがあります。
かなりの頻度で提出先である経理部などの他部署から指摘されて、再提出を命じられたり、提出期限に間に合わず注意されたりしているようです(事例性)。
Qさんは、素直で愛嬌があるタイプだったので、ミスが多くても上司を含めた周囲は、軽く注意はするものの笑って済ませているようなところがありました。
しかし、経理部からQさんの上司に対して正式に抗議があり、上司とQさんは対応を迫られることになりました。
上司はQさんに対し、いつもより厳しめな口調で、「書類を経理部に提出する前によくチェックしてから出すこと」や「提出期限を守ること」を指示しましたが、あまり改善はされなかったようです。
そのうえ、上司のいつもより厳しい口調にショックを受けたのか、それ以来、Qさんの上司に対する態度がよそよそしくなった気がすると言って、上司がカウンセラーである筆者のところに相談にきました。
上司は、ネットニュースで読んだ「発達障害」の記事が、Qさんに合致していると感じたそうです。
筆者がQさんの上司から彼女に対する「困りごと」(事例性)をヒアリングしようとすると、上司は「Qさんは、発達障害だと思いますか?」と問うてきました。発達障害かどうかを心配する上司の気持ちもわかるのですが、職場における対応プロセスでは「事例性」をていねいに把握していくことが重要です。
繰り返しになりますが、統合失症などの診断名が出ていても、当事者や職場に具体的な「困りごと」がなく、適応して働けているのならば問題にはならないからです。
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