先進国の成長率低下、人口動態だけではなくアニマルスピリットに問題

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スペンスは「世界がずっと変わらないと見ることには、大きな魅力がある。成長戦略にありがちな失敗の一つが、特定の成功パターンを見つけると、あまりにも長期間すがり付こうとすることだ」と指摘している。

これはまさに日本に当てはまり、今もなおその状況が続いている。

振り返ってみれば、日本は高度成長期に産業構造の高度化が進み、所得が増えて消費が増え、中間層が豊かになった。外貨を稼ぐ輸出主導型から、内需主導型の成長へと転換ができたからだ。今の中国で、都市労働者がネズミ族と呼ばれるほど苦しい生活を強いられ、外需主体、投資牽引型から転換できるかが問われているのに比べればうまくいった。

ところが、日本もニクソンショック、プラザ合意に直面すると円高恐怖症のあまり、金融緩和、財政出動に走って、バブルを醸成した。バブル崩壊後はさらに政策を使い果たすところまで進んだ。

金融緩和がゼロ金利に到達した後は、より長期の金利を潰していく時間軸政策、量的緩和に、リスク資産の購入という実質的に財政政策に踏み込むことまでやっている。財政も債務残高が98年に対GDP(国民総生産)比で100%を突破し、今や200%超にまで膨らんだ。こうした中で、産業構造の転換も遅れていく。

政府が借金で行う円売りドル買いの為替介入は輸出産業のための補助金にほかならない。新興国にキャッチアップされている業種でも補助金をバラまき続けている。エコポイントで一時的に持ち上げた薄型テレビから各社は撤退を余儀なくされた。一方で、賃金は97年ごろから減少傾向が続いてきた。リストラによって企業は収益を守ろうとしてきた。

 

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