先進国の成長率低下、人口動態だけではなくアニマルスピリットに問題
2012年も欧州債務危機は続き、米国のバランスシート調整、新興国のソフトランディングと世界経済から目が離せない。地政学的リスクもイランなど中東情勢に、北朝鮮というファクターが加わった。日本は、といえば、こうしたリスクに目配りしつつ、危機の震源地にならないように解決すべき課題への着実な取り組みが求められる。
今の経済危機の遠因、そもそもなぜ、バブルができてしまったのかを考えると、グローバルなインバランスを固定化してしまったからだ。日本や中国などは必要なだけの外貨準備を超えて経常黒字を稼ぎ続け、米国は、住宅価格の上昇をテコに借金と消費で経常赤字を出し続けた。
日本など先進国の潜在成長率は、1970年代に戦後復興からの高度成長期が終わり低下、80年代末に東西冷戦の終結によってグローバル化が進展、さらに一段低下したと考えられる。
しかし、長期的な成長率の低下だとは誰しも思いたくないので、一時的な景気循環ととらえ、「不況期だから政策的にテコ入れをするべきだ」と金融緩和や減税、財政支出を続けてきた。社会の大きな変化に適応するような産業構造の改革が行われず、マクロ政策でバブルを起こすことによってごまかしてきたのが実態だ。その崩壊が最も早かったのが日本だ。
所得を増やすための成長
ノーベル賞受賞経済学者のマイケル・スペンスは近著『マルチスピード化する世界の中で』で、成長の意味は、所得水準を高めることにあると強調し、80年代半ばに韓国で労働集約型の産業が競争力を失い、労働者が職を失いそうになっていたときに、「賃金を抑制することが望ましい」という論調があったことに仰天した、としている。
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