ボードゲームが「能力格差」を乗り越えられる理由 ダイバーシティにつながるヒントがあった

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小野 ボードゲームというツールが、多様でバラバラな患者さんたちに「一緒にいられる」体験を可能にすると。『知性は死なない』では、それを認知科学の「アフォーダンス」(Affordance:提供されること)の概念で説明されていたのが印象的でした。

患者さんどうしでのプレイングだと、うつ状態の軽重による「能力」の違いが大きくなりがちで、ボードゲームで盛り上がるなんて不可能にも見える。しかし、ルールをきちんと把握できない参加者が混じっても大丈夫な環境を、ゲームのデザインを通じて作者は提供(アフォード)できると。本格的な競技性のある作品でも、これが言えると指摘されていましたね。

初心者でも上級者でも、いつも楽しい

『カルカソンヌ』(メビウスゲームズ)。タイルをつないで地図を作る。経験者が、初心者に教えながら、「みんなで楽しむ」ためにプレイをすることができる

與那覇 はい。同書で出した例は、入院中に最初に購入した『カルカソンヌ』です(2001年のドイツ年間ゲーム大賞)。世界大会まで存在するほど、高度な技術の競いあいにも適した作品ですが、しかし経験者が初心者に教えながら、むしろ「みんなで楽しむ」ことを目的にプレイすることも可能なデザインになっています。

各プレイヤーが行うのは、手番が来るたびに「地図の一部」が描かれたタイルを1枚めくって、一番自分の得点が伸びそうな箇所に配置するだけ。なので、初心者が変なところにタイルを置こうとしても、上級者が「そこよりここに置いた方が、点数が伸びるよ」と教えてあげればいいわけですね。

逆に『UNO』だと、手札のうちどれを出すかは各自がひとりで決めないといけないので、プレイ中に教えあえる度合いが低い。こうした「助言可能性」(アドバイス・アビリティ)といった観点で、ゲームを論じるやり方があってもよい気がするんです。

小野 面白い視点です。ボードゲームの難易度を分類する際、これまではプレイ時間の長さやカードの総量など、「ルールの複雑さ」を基準にしがちでした。しかし與那覇さんはむしろ、ルールに沿ってプレイする際に「お互いに教えあうことができるデザインか」で見た方がよいという。

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