新型iPhoneに秘められたスペック以上の価値 最先端技術には頼らず、最高の体験を提供
最後に、米国のApple Storeで導入される「iPhone Update Program」について触れておこう。
今回のiPhone 6sも、各色16GBモデルが、キャリアの2年契約を前提に199ドルで購入できる価格と販売方式が維持された。iPadに採用されているデバイス上からキャリアのプランを選べるApple SIMは、iPhoneには採用されなかった。
しかし、iPhoneの販売について、アップル自身による新たな施策も用意された。毎年緩やかながら着実な進化を遂げるiPhoneを、2年おきではなく毎年買い換えたい、というニーズを満たすのが、iPhone Update Programだ。
米国では、キャリアが毎年機種変更できるようにするプランを提供しはじめている。T-Mobileの「JUMP! on demand」プランでは、下取りを前提とした18ヶ月リース契約を結び、年間3台まで最新の端末に乗り換えられるようにしている。
アップルのiPhone Update Programは、リースとは異なり、iPhoneを24カ月の分割払いにして月々の料金を支払っていく。ただし12カ月までの支払いが経過した段階で、新しいiPhoneに買い換えられる。
発売したタイミングでこのプログラムを利用して購入すれば、翌年も発売直後に買い換えられるようになる。
デバイスはSIMフリーモデルのiPhone 6sもしくはiPhone 6s Plusで、月々の価格にはApple Care+の料金も含まれ、iPhone 6s 16GBで32.41ドル。例えば筆者が使おうと考えているiPhone 6s Plus 64GBモデルなら、40.75ドルとなる。キャリアはVerizon、AT&T、T-Mobile、Sprintの米4大キャリアから選べる。
販売台数が激減する時代への布石
iPhoneのセールスそのものに、すぐの影響は軽微とみられるが、キャリアが販売奨励金の制度を止め始めており、顧客のiPhone購入にかかる負担額が大幅に増え、しかも一括で支払わなければならなくなると、確実に販売台数が落ち込む。
この施策は、通信会社の再編やアップル自身の参入への布石、といった野心的な意図というよりは、アップルがiPhoneをより有利に買い換えられるように環境を整備する必要が生じたことが原因だ。
むしろアップルが、iPhone販売をキャリアに依存してきたことへの危機感の表れ、と筆者は読み取っている。買い換え周期を2年から1年に短縮し、新機種を毎年購入する顧客を増やすことで、販売台数を維持しようとしているのだ。
焦りとまではいわないが、飽和つつある市場、あるいは中国のように販売台数の減少が見られる市場に対応する戦略として、注目すべき施策と言えるだろう。
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