紀伊国屋の「春樹本買い占め」に潜む問題 ネット書店への対抗策は消費者にも痛手か
「ネット書店では、ポイント制度などを利用して、実質的に書籍をリアル書店より安く売っているケースも少なくありません。価格競争はあるといえるでしょう」
紀伊国屋のスキームが書籍の価格競争に影響を与える可能性はあるのか。
紀伊国屋の行為は、独禁法違反なのか?
「書籍は、価格等の取引条件面では他の商品に代替されにくい、つまり、『商品が差別化されている』という面があります。つまり、Aという作家が好きな人が、値段が安いからといってBという知らない作家の作品を購入することはないという特徴があります。
そのため、著名な作者の書籍を読みたい消費者は、その書籍がリアル書店にしか置いていなければ、たとえ多少値段が高くても、リアル書店で購入せざるをえなくなる可能性があります。
したがって、出版社を『拘束』して販売先を制限することで、出版社などとの契約で再販売価格の拘束を受けているリアル書店にのみ、書籍を流通させるようことになれば、より高い価格で消費者は購入せざるをえなくなる可能性があります。もし、こうした行為があれば、独禁法違反になる可能性があると考えられます。
なお、書籍については、中古品の市場があります。中古品が安く販売されるようになり、それに対抗して新品も値下げせざるをえない状況が生じるのであれば、新品の書籍の価格競争が機能しうる可能性もあります。
しかし、新品の書籍が、再販売価格の拘束を受けているリアル書店にのみ供給されるのだとすれば、リアル書店は、出版社等の契約により値引き販売はできないので、結局のところ、新品の書籍の販売価格は安くはならないでしょう」
紀伊国屋の行為を公取委が問題視する可能性はあるだろうか。
「買い取りだけでなく『拘束』があるか否かは不明ですし、また、書籍の1タイトルのみに関する行為のようですので、独禁法違反を取り締まっている公取委が、紀伊国屋書店の今回のスキームに問題があるかどうかについて、大々的な調査まではしないかもしれませんね」
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