本の「定価維持」は、もはや正当化が難しい 業界にとっては、今が「脱レガシー」の好機
通販サイト「Amazon.co.jp」が6月下旬から、中堅出版社6社の書籍を最大で「20%割引」する期間限定キャンペーンを始め、注目を集めている。これまで書籍や雑誌、新聞などの商品は、「再販制度(再販価格維持制度)」のために、小売店が勝手に値段を下げて「割引販売」することができなかったが、その前例をくつがえすものと言えるからだ。
報道によると、今回のキャンペーンではアマゾンが個別に出版社と合意し値引きできるようにしたという。参加する出版社は、再販制度で定価販売する利点より、返品を減らす利点のほうが大きいと判断したとみられる。
なぜ書籍は「特別扱い」なのか
日本経済新聞は「一般の書店からは、制度を揺るがしかねないと反発が起きる可能性がある」と指摘しているが、そもそもなぜ、書店などの販売事業者は、書籍の価格を自由に決められないのだろうか。また、今後も書籍や雑誌などを特別扱いすることは、妥当なのだろうか。独占禁止法に詳しい三平聡史弁護士に聞いた。
「自由市場経済では『自由競争』が前提となって、マーケットメカニズムで価格・クオリティが最適化されます。自由競争は重要なので、これを妨害する『業界の悪行』は禁止されています。その代表例が『価格協定=カルテル』です」
三平弁護士はこのように述べる。なぜ書籍は「再販制度」の下で、価格を決めることが許されているのだろうか。