日本株は、今本当に買ってもいいのか 歴史的反騰後、10日の日経平均は再び乱高下へ

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ヘッジファンド勢の中には、すでに歴史的な反発を見越し、9日の反発局面でも、「目先の急落リスクが高い」と考え、すべて売っていったん利益を確定した向きもあるようだ。

「日経平均の戻り」に比べ限定的だった「ドルの戻り」

背景には、やはり「まだ本格的な株価回復は困難」との見方がある。9日の日経平均株価の戻りに比べ、ドル円の上昇は限定的だった。

これは、この日の株価の上昇が円安を背景としたものではなく、空売り筋の買戻し主導であったことの証左である。この点は、今後の株価動向を見極める上できわめて重要だ。また8日の引け時点でPER(株価収益率)は14倍を割り込んでいたもようだが、これはそれまでの経済環境を前提とした企業業績予想が背景にある。

もし、筆者がシナリオの一つとして想定するような円高に進めば、今後企業業績の下方修正リスクが高まっていくだろう。またいったん下落基調に入った株価の基調転換には、一定の日柄が必要であることは、本欄でもすでに何度も解説した通りである。

したがって、日本株も当面は戻り売り基調が続くとの見方を維持したい。来週の16~17日にはFOMC(米公開市場委員会)が控えている。現状では、FRBは利上げを見送る公算が大きい。万一利上げが決定されたとしても、追加的な利上げは行わないことは明白であり、いずれのケースでもドル安に転じる可能性が高い。

日本株が本格的に反発するには、中国の財政出動による景気回復への期待の高まりや、中国株自体の急回復などが必要になりそうだ。日本株は流動性が高いことから、海外ヘッジファンドにとって、市場の閉鎖リスクが消えない中国株の代替として取引されている。したがって、日本株の上昇には、特に中国株が落ち着くことが必須となる。さらに、日銀の追加緩和などがあれば、大きなサプライズになりそうだ。

今後、これらの支援材料が、投資家心理の好転につながる可能性は十分にある。しかし、「円安のサポート」がない現時点での日本株の反発は、やはり限定的となろう。200日移動平均線や7月9日の安値を意識した1万9100円を明確に超えるまで、引き続き「戻り売り基調」との見方を維持したい。

今後1週間の日経平均株価の予想レンジもやや広くなるが、1万7500円~1万9100円としたい。
 

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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