トヨタとNTT、5000億円規模「AI安全基盤」の中身 事故を未然に防ぐ業界共通のプラットフォーム

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

背景には、両社が持つ次世代技術の成熟がある。

トヨタは2025年から新しいソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)」の導入を始める。Areneは車載ソフトウェアを統合的に管理し、無線でのアップデートや新機能の追加を可能にする基盤だ。自動車のソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)への転換を支える重要な技術となる。

一方のNTTは、次世代通信インフラ「IOWN」(アイオン)の開発を進めている。IOWNは光技術を活用し、大容量データを低消費電力で高速処理する。具体的には、光をベースとした高速ネットワーク、デジタル空間でのシミュレーション技術、ICTリソースの最適化基盤という3つの技術で構成される。従来の100分の1の消費電力で、大量のデータをリアルタイムに処理できるという。

両社の技術は補完関係にある。SDV化で増大する車両データの処理に、IOWNの大容量・低遅延通信が不可欠となるためだ。

トヨタ自動車 NTT
SDV「Arene」を持つトヨタと、通信基盤「IOWN」を持つNTTがAI基盤で連携する(出典:トヨタ自動車資料)

3つの基盤が支える未来のモビリティ

では、具体的に両社は何を作ろうとしているのか。その答えは「3つの基盤」にある。

第1の基盤は、分散型計算資源データセンターだ。トヨタの試算では、2030年にはSDVの普及により、通信量は現在の22倍、計算量は150倍に達する。この膨大な処理需要に応えるため、NTTのIOWN技術をベースとした光技術による低消費電力データセンターを全国各地に分散配置し、車両から送られる大量のデータをリアルタイムで処理する。

NTT
分散型のAI用データセンターを全国に配置する(出典:NTT資料)

第2の基盤は、インテリジェントな通信基盤である。車からの位置や速度、周辺状況などのデータを絶え間なく収集し、人やインフラとの情報連携を実現する。これまでの通信は「つながる・つながらない」の二択という状況だった。これに対し、つながりにくくなる状況を察知して賢く通信相手を切り替えながら、途切れない通信環境の実現を目指す。

NTT
衛星や5Gを賢く切り替え、途切れない通信を目指す(出典:NTT資料)
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事