さらに、「老害」は社会全体の発展を妨げる要因にもなり得ます。年功序列や古い価値観が色濃く残る環境では、新しいアイデアは浮かびにくく、改革が進みにくくなり、社会全体が停滞し、変革が進まない状況が続くことになります。
このように、「老害」は個人だけでなく、組織や社会全体に影響を及ぼす大きな問題にもつながりかねないことから、見過ごすことはできないのです。
「老害」には誰しもが陥る ─ 「老害脳」という概念
人や組織、社会にまでさまざまな影響を及ぼすと言える「老害」ですが、脳科学の研究者としてお答えするなら、「老害」は誰にでも起きることです。決して特定の人だけに問題があるわけではなく、「よくあること」です。
「老害」をもたらすような人は、もともとそのような性格だったと考えられがちですが、実はそうではありません。脳の働きが原因なのです。先に述べた「老害」的な行動の数々は、多くの場合、脳機能の変化によって引き起こされていると考えられます。
私は「老害」的な特徴のある脳を「老害脳」と称しています。ただし、「老害脳」は医学的な専門用語ではないことも付け加えておきます。
「老害」が脳によって引き起こされている以上、「老害」は誰にでも起きる可能性があります。今は「老害」の被害者側の人であっても、加齢とともにやがては「老害脳」化し、加害者側にも十分なり得るのです。当然、加害者側と被害者側の両方に同時になり得る時期も存在します。
「そんな! あんな風にはなりたくない」「自分は大丈夫だろうか……」と思っている方もいるかもしれません。
たとえば、最近このようなことを感じることはありませんか?
こうした兆候がある場合、実はすでに「老害脳」化が始まっているかもしれません。
もしかして気づかないうちに自分の振る舞いが、昔「あんな風にはなりたくない」と思っていた「老害」の姿そのものになっているとしたら? よかれと思ってやったことが、実は相手から「老害」だと思われてしまっていたら?
もし仮に、自分の行動の99%に「老害」感がなくても、残りの1%で「老害」が感じられたら、それは相手に強烈な印象を残してしまうかもしれません。そうすると、他の全ての言動も、その言動をした自分自身までも「老害」と思われてしまうのでは?
実は、私自身は医師として、生まれたばかりの赤ちゃんから、ビジネスパーソン、さらには100歳を超えた超高齢者まで、どんな年齢層の人とも気さくに話せることを特技としてきました。
しかし、決して若い人に偉ぶらないように、十分気をつけているつもりでも、知らないうちに余計なことを口走り、嫌な思いをさせてしまっているかもしれない──。こう考え始めると、何とも悲しく、いたたまれない思いになってしまうのです。
「老害」には誰もが陥る可能性があります。年齢を重ねるうちに、知らず知らずのうちに脳の機能が変化し、なってしまうものなのです。
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