中国メーカーの値下げ競争がタイ市場で始まったのは、2024年の初めからだ。前出の長城汽車やBYDのほか、国有大手の上海汽車集団や新興EVメーカーの哪吒汽車(ネタ)なども参戦している。
タイの自動車市場では、かつては新車販売の約9割を日本メーカーのクルマが占めていた。日本メーカーは中古車を含めた販売価格を安定させるため、中国メーカーのような(新車の)大幅値下げによる販促を打つことは稀だった。
もちろん、値下げ競争は中国メーカーにとっても本意ではない。2023年までのタイ市場は、中国メーカーの間で「成長性が高く開放的な有望市場」と見なされていた。ところが、中国勢の大量進出に加えて市場自体の成長も鈍化し、思惑が大きく外れた格好だ。
日本メーカーはさらに深刻
現地の自動車専門メディア、オートライフ・タイランドのデータによれば、タイ市場の2023年のEV販売台数は6万6000台と、前年の7.8倍に急増した。ところが、2024年上半期の販売台数は3万7000台にとどまり、前年同期比の伸び率は2割に届かなかった。
EV販売の予期せぬ急減速を受け、業界団体のタイEV協会は2024年7月、通年の予想販売台数を15万台から8万台に大幅に引き下げた。
これはEVだけの話ではない。市場調査会社マークラインズのデータによれば、タイ市場の2024年1月から8月までの(エンジン車を含む)新車販売台数は39万9000台と、前年同期比23.9%も減少した。
タイ経済が全体的に減速する中、家計が抱える債務が高水準にあり、金融機関が自動車ローンの承認に慎重になったことが影響しているとされる。日本メーカーの主力であるエンジン車は、EVに輪をかけて販売が低迷している。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は10月22日
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