【産業天気図・海運業】運賃市況・燃油・為替の環境好転で07年度は薄日差す

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海運業は今06年度後半に入って環境が好転。依然「曇り」がちなものの、来07年度にかけては薄日が差す状況も期待できそうだ。
 海運の主要部門には、不特定多数の荷主向けに定期運航する「コンテナ船」、鉄鉱石・石炭・木材・穀物など乾いた素材原料を専用船で運ぶ「バラ積み船」、原油・ガスなど液体や気体のエネルギーを専用船で運ぶ「タンカー」などがある。このうちバラ積み船については中小型船を中心に運賃市況が高騰し、新和海運<9110.東証>、第一中央汽船<9132.東証>、飯野海運<9119.東証>の準大手3社は8月時点での増額修正に続き、11月の中間決算発表前後にも再増額修正に踏み切るなど回復色を強めている。
 日本郵船<9101.東証>、商船三井<9104.東証>、川崎汽船<9107.東証>の大手3社もバラ積み船部門では運賃市況高騰の恩恵を受けている。しかし、海外で再編が進み競争が激化しているコンテナ船について運賃市況が軟化し、燃油高も直撃したことから軒並み部門赤字となり、11月時点では各社とも減益幅縮小程度の増額修正にとどまった。ちなみにコンテナ船部門を持つのは大手3社だけで、準大手・中堅以下各社には関係がない。業界全体では06年度下期は「曇り」が続こう。
 ただ、07年度にかけてはコンテナ船部門も需給逼迫感が強まり、燃油高の運賃転嫁が徐々に荷主に受け入れられつつある模様。また燃油価格は大手・準大手が足元で想定しているC重油1トン当たり330~350ドル水準より値下がりする傾向で、為替もこのところの円安傾向が続けば収益の下支え要因になりそうだ。さらに大手各社を中心に、比較的低船価だった時期に発注した新造船が続々投入され、運航規模拡大効果が収益改善に直結する可能性が高い。大手3社ではコンテナ船部門がなお足を引っ張る恐れはあるが、業界全体では依然「曇り」ながら、雲間から薄日が差す程度の回復は期待できそうだ。
【大滝俊一記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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