持ち味薄れた?「孤独のグルメ」特別編への違和感 マンネリこそが持ち味のドラマだったが…
もう1つ気になるのは、『劇映画 孤独のグルメ』(2025年1月10日公開)だ。これまでにも2時間枠のスペシャルドラマを年末年始に放送してきており、劇場版でテレビシリーズと同じことをやれば、ファンは当然「テレビでやってほしい」となる。
チケットを購入して映画館のスクリーンで見る意義のある作品性がなければ、ファンにとってフラストレーションになるだろう。テレビ局のビジネスのためだけの劇場版と思われれば、ファン離れを引き起こす可能性もある。
また内容的にも、劇場版は冒険物語の要素があり、ラブストーリーも盛り込まれる。作品への愛が強く、サービス精神が旺盛な松重豊が監督、脚本、主演を務めるだけに、従来のストーリーからの新機軸を目指す、脱マンネリの方向性がより色濃くにじむことも予想される。
映画はその評価が興収という数字で残酷なまでに目に見えて表れる。そこで今回のドラマと劇場版へのファンの評価が世の中に示されるだろう。
特別編と劇場版を経たこれから
ただ、今回のドラマは特別編と銘打っており、劇場版とあわせて、本来のシリーズのスピンオフと捉えることもできる。この2作がパイロット的な位置づけであり、末永いシリーズ継続のための布石となるのであれば、その結果を踏まえた次作は、ファンのニーズに寄り添うものになることが期待される。
原作者の久住昌之さんは、10シーズン続くドラマ版のマンネリ化によるファン離れに対して、異を唱えていた。
「毎日ふつうに食事することを誰もマンネリとは思わないですよね。人の生活のなかの空腹と食事、という繰り返しを描いているんです。同じようなものを食べていても、毎日同じ気持ちではない。(中略)お腹が空いたからなにか食べようという誰にでもある普通の行動。それを丁寧に描こうとすれば、いくらでもドラマはあると思います」(過去記事:10年続く「孤独のグルメ」マンネリ化しない必然)
マンネリであることを、誰もマンネリとは思わない。この言葉こそ『孤独のグルメ』という特異なシリーズの本質を突いているのではないだろうか。
今回の特別編と劇場版をひとつのステップとして、王道を守りつつ時代とファンに寄り添って進化を遂げていくことが期待される。
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