なぜ中高の「部活動」は"強制"になったのか? 子どもたちも先生も疲弊している!

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――ご著書(『教育という病』光文社新書)に書かれていましたが、部活動の顧問をする先生たちの負担も、大変なことになっているようですね。平日の残業だけでなく、毎週の土日も潰れてしまうという。月に一度も休めない先生もいるのだとか。

内田 良氏(撮影 : 梅谷 秀司)

非常に過酷です。僕のところにも、そういった先生たちからたくさんの悲鳴が届いています。

もちろん、なかには「部活動をやるために先生になった!」というような人もいるにはいますけれど、「やりたくないのに、やらされて」という先生たちの声は、本当にたくさん聞きます。

先生たちに話を聞くと、わりと最初はのめりこむことが多いんですって。初めの2、3年は、みんな「やったことないけど、頑張ろう!」みたいな感じなんだけれど、結婚したり、30代にさしかかったりしてくると、土日もない、デートする時間もない、「これはなんか、おかしいぞ」と気づき始めるんだそうです。

先生の負担がとにかく大きい

――しかも、手当てがものすごく安いという……。

土日の部活動指導の手当ては、4時間以上の日額で3000円。一日中指導しても同じですからね。最低賃金よりはるかに低い。でも、「ボランティアだから」という切り札でもって、まかりとおっています。実際のところ「ボランティアでお金もらえてるだけ、ラッキーじゃない?」くらいの扱いですよね(苦笑)。

――部活動の位置付けが“グレーゾーン”だから、そういうことが起きてしまうんですよね。ものすごく不思議なんですが、どうして文科省はこういった状況を放置しているんですか? わざと?

なぜグレーゾーンか、というと難しいんですけれど、そうやって肥大化していった部活動が、なぜ縮小に向かわなかったか、という理由はあると思います。

部活動のなかで、「芸術やスポーツ活動のエリート」が育っていくわけです。しかも“無償(タダ)”で。国はいっさいお金を使わずに、オリンピックにいけるような子を見つけ、育てられるという。

いわゆる「アンペイド・ワーク(無償労働)」の問題ですよね。それがこれからも、この問題が改善されづらい大きなポイントだと思います。

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