モンサント、頑なだった態度をなぜ一変? 遺伝子組み換えの最先端、根強い不安に対応

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――モンサントの研究方針についてお聞きしたい。モンサントは、どうしても遺伝子組み換え関連ばかりが注目されるが、会社全体としてはどのような方針を持っているのか。

農業はさまざまな課題とジレンマに直面している。食糧供給が十分に行き渡るのかどうか、農業経営は持続可能なものか。耕作地は限られ、気候変動も大きな不安要素となっている。これらを解消できるようなテクノロジーがあるのか、どう駆使すれば問題を解決できるか、努力して(研究を続けて)いる。

「自分の農業にiPadは欠かせない」というシリング農場のロドニー・シリングさん。
このiPadにはクライメート社が開発したソフトが入っており、圃場の状況や天候などの情報が一目でわかるようになっている。

問題解決に向け提供しているツールの一つは、データサイエンスによる精密農法だ。2013年にモンサントが買収した「クライメート・コーポレーション」によるもの。営農では40以上の判断が必要とされるが、巨大なデータを抽出して得られる深い洞察を基に、農業生産者へ判断材料を提供している。特に天候や土壌の状態に関するものが重要。日照りなどの天候の変化、寒暖の差といった気候に関するデータを収集・分析することで、より精密な農業が行えるようになるだろう。

これまでモンサントは、効果的な雑草・害虫防除により、収量が増える種子を提供してきた。乾燥など、作物に加わるストレスに耐性を持つ種子もその一つだった。だが、種子だけでは不十分だ。クライメート社が提供するツールを使えば、種子や農薬、肥料を自分の圃場にいつ、どのように植えたり散布したりすればよいかといった、意志決定が可能になる。栽培密度はどの程度(が適当)かも判断できるようになるだろう。

10億ドル以上を研究開発費用に

――耕作地の減少を防ぐツールはあるか。土壌の流出が進んでいるために、耕作地の減少が深刻な状況になると予見されている。

耕さなくても雑草防除ができる、すなわち不耕起でも栽培可能な(除草剤耐性の)種子が土壌保護の改善に寄与している。さらに、精密農業を駆使し、不必要にトラクターやコンバインを使わなければ、省エネ化も可能だ。土壌改良剤や肥料もどれくらいが適切なのか、精密なレベルでわかれば、余計に使わずに済む。そのために適切なツールを提供し、持続可能であると同時に、十分な生産性を保つ農業が可能になるだろう。

モンサントはイノベーションの会社であることを自負し、研究開発投資を重要視している。現在、売上高の10%を研究開発費に充てている(2014年度売上高は158億5500万ドル=約1.98兆円)。新しい革新的な技術を確立すると同時に、作物の保護やデータサイエンスに関する研究にも投資していく。究極の目的は、持続可能な農業を可能にすることだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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