キリンの「クラフトビール」が苦戦、10年目の大反省 大量の広告投資から転換、事業部立ち上げ再起

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ところが、2021年に家庭用の缶商品「スプリングバレー 豊潤<496>」を全国発売し、方針は大幅に変化していく。

スプリングバレー 豊潤<496>は1カ月の1~31日をすべて足すと496になり「毎日飲んでも飲み飽きない」という意味を込めている。(記者撮影)

テレビCMを大量投入し、多額の広告宣伝費を使用してきた。全国の小売店へむらなく展開するための大量生産、大がかりな広告投資は当初の理念と相反する行動だった。

国内のクラフトビールに明確な定義はないが、ヤッホーブルーイングによれば「小さな醸造所が造った、造り手たちの革新性から生まれた多様な味わいのビール」のこと。スプリングバレーを製造するのは「小さな醸造所」ではない。

原点回帰で盛り返せるか

業界関係者からは「このままではスプリングバレーは消えていくだろう。小さなブルワリーの運営にとどめておけばよかった」との厳しい声も聞こえてくる。

直営の体験型ブルワリー併設店「スプリングバレーブルワリー東京」を展開、写真は醸造タンク(記者撮影)

スプリングバレーの元々の理念に立ち返り、再出発を決めたキリン。一番搾りや「晴れ風」など、標準的な価格帯のスタンダードビールを大量生産と大規模な広告投資でヒットさせた同社にとって、クラフトビールはまだ経験値の浅い商品群といえる。

「大手メーカーが大量生産するクラフトビール」という矛盾点を抱えつつ、どうブランドの再成長につなげていくのか。キリンにとって、スプリングバレーの拡販は長い道のりになりそうだ。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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