キリンの「クラフトビール」が苦戦、10年目の大反省 大量の広告投資から転換、事業部立ち上げ再起

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大規模な広告投資やリニューアルにもかかわらず、スプリングバレーは売り上げが低迷している(記者撮影)

「正直、スプリングバレーは決してよくない。目標を下回って推移している」。キリンビールのクラフトビール事業部長・大谷哲司氏は苦い顔でこう語る。

キリンは2023年、クラフトビールの主力ブランド「スプリングバレー」の販売数量を前年比70%以上にするという高い目標をぶち上げた。だが、結果は同0.1%増の170万ケースと、理想からほど遠い結果に終わった。

今年もさらに深刻な状況が続く。数量目標(缶商品のみ)は前年比21%増の190万ケースと控えめに設定したものの、1月から9月の累計では前年同期比で31%も減少しているのだ。

新たにクラフトビール事業部を立ち上げ

決して力を抜いているわけではない。2023年にはスプリングバレーの新フレーバーを目玉商品として打ち出した。俳優の山田孝之や広瀬アリスを起用し、大きな広告投資も展開。さらに今年3月には、ブランド全体で味やパッケージをリニューアルし、数量の成長を狙ってきた。

数々の取り組みが空振りに終わった理由は「効率よく大量生産し、大量のCMを投下して飲んでもらう(『一番搾り』のような)商品のマーケティング手法を踏襲してきてしまった」(大谷氏)からだった。多くの消費者にとって「名前は知っているけど買わない」ブランドになっていたのだ。

この反省から、今年10月、キリンはクラフトビール事業部を立ち上げた。従来はキリンビールの中のマーケティング部や営業部がクラフトビール関連の業務も行っていたが、一連の業務を1つの部署に集約する。

テレビCMからWeb広告へシフトし、タレントの起用方法も見直すなど方針を変更する。事業部の設置と同時に、キリンが2014年に資本業務提携しているクラフトビール大手・ヤッホーブルーイングから初めて出向者を2名受け入れた。同社と連携し、売り場づくりやイベント開催を実行する考えだ。

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