キリンの「クラフトビール」が苦戦、10年目の大反省 大量の広告投資から転換、事業部立ち上げ再起
また、広告投資によってスプリングバレーのブランドの認知は獲得できていたものの、実際に飲食店やイベントでクラフトビールを体験し、それを缶の売り上げにつなげるサイクルがうまく回っていなかった。
そこで、クラフトビール専用の業務用サーバーの導入に力を入れる。どのビールとどんな料理がマッチするかといったメニュー提案とともに、居酒屋やバルなどへの営業を進める。業務用と家庭用のつながりを意識してブランドの強化に努める。
「クラフトビールの魅力は歴史・文化・創造性。(一番搾りのような)一般的なビールと同じ伝え方では無理。スピーディーに量を売るのではなく中期的に取り組む。事業部の設置はこうした意思の表れだ」(大谷氏)
「反・大量生産」のブランドだったが・・・
そもそも、スプリングバレーはビールの大量生産に対する疑問から生まれた商品だ。キリンがブランドの構想を開始したのは2011年。当時、世間では「ビールは味がどれも同じ」「ワインや日本酒に比べて安っぽく工業的」といった評価がなされていたという。
効率よく量産し、競争してビールの価格を下げてきた大手メーカーが、ビールを退屈にしたのではないか。そんな反省から、キリンビールの礎とも言えるスプリングバレーのブランドを用いて、クラフトビール醸造所を設立するプロジェクトが始まった。
当初は業務用で、料理の特徴に合ったクラフトビールを組み合わせる提案や、ほかのクラフトブルワリーとのコラボレーションなどを実施。一般的なビールでは珍しい取り組みを進め、クラフトビールを飲食店へ草の根的に普及させていく活動に力を注いでいた。
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