0歳から89歳、47人が暮らす家に行ってみた 東京・日暮里にある「コレクティブハウス」

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「不安はなくて、むしろワクワクしていました。住む前から、居住者のメーリングリストで周辺の小学校や保育園の評判を丁寧に教えてくれましたし」

そんな大きな期待を胸に、伊藤さん一家の「かんかん森」での生活は始まった。

コレクティブハウスの多彩な魅力

伊藤さんは、「地縁の代替」としてコレクティブハウスを選択したが、具体的には、ここでの生活の何に魅力を感じているのだろうか?

「人によって、コレクティブハウスの魅力は、全然、違うと思います。たとえば、みんなで集まって食事をとるコモンミールという共同の食事があります。料理好きの独り暮らしの居住者がいるのですが、大勢の人に料理を食べてもらえるから、自分の腕を十分に発揮できてうれしいと言っていました。また、親が食事をしている間、子供がいなかったり手がかからなくなった居住者の方が、子供の面倒をみてくれることが多いので、とても助かっています。子供からエネルギーをもらえると言ってくれる人もいて、本当にありがたいです」

「みんなご飯を食べるのも忘れるくらい、子供と遊ぶのを楽しんじゃってて、どっちが遊んでもらってるのかわからないわね」

インタビュー中、伊藤さんの子供をあやしてくれた坂元さんは、ここに12年間暮らしている

伊藤さんへのインタビューの横で、泣きだした伊藤さんの男の子をあやしながら、同じくかんかん森で暮らす坂元さんは言った。かんかん森に12年間暮らしている坂元さんは、今までこうやって何人もの子供と遊んで、そのたびにエネルギーをもらってきたのだろう。多様な世代の人たちと触れ合えるのは、コレクティブハウスの大きな魅力である。伊藤さんにとって、居住者のみなさん(特に同じママさんたち)はどんな存在なのだろうか?

「ママ友ではあるんですけど、みんな仕事もしているので、よく仕事の話をします。本当に尊敬できる人たちです。きっと、ここでしか出会うことはできなかった人たちですね」

コレクティブハウスに住む理由も、魅力も、当然、人それぞれである。でも、それぞれがそれぞれの楽しみやメリットを見いだして暮らしている様子がうかがわれた。

家族構成や年代もバラバラな47人の生活。47人、というのはかなりの人数である。運営への関与度レベルや意志の統一をするのは、なかなか難しそうだ。伊藤さんご本人は子育てを通して、居住者と関係を持ちやすく関与度も高そうだが、旦那さんはどうなのだろうか?

「平日は仕事で帰宅が遅いので、家に長くいるのは休日だけです。だから、あまり時間もなく、自分から積極的に参加するというわけでは決してありません」

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