稲盛氏が「コピー代2円」と答えた秘書を叱った訳 伝えたかった「労務コスト」と「経営者の視点」

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その際に大切になるのが、“謙虚さ”です。

プライドの高い人は、悪いのは旧経営陣だ、経済環境のせいだと責任を自分以外に求めたがりますが、そのような姿勢では再生は不可能だというのです。

ですから、「まずは皆さんが謙虚に反省し、自らの非を認めることから再生へのスタートは始まる」と伝えたのです。こうして真摯に謙虚に反省すれば、次に何をすべきかがわかってくる。それは何か。稲盛さんはこう言いました。

「おそらく、皆さんは『こうすればいい』とわかっていたのに、自分の評価を気にし、上司に気に入られたい、部下に嫌われたくない、失敗したらどうしようと、悩み、結局実行できなかったのではないか」と指摘したあと、「今回は最後のチャンスなので、“勇気”を持ってやるべきことを必ず実践してほしい」と熱く訴えたのです。

そして、そのときには“素直さ”が必要だとも教えています。

「他者から素直に学ぶことができる人だけが成長できる」のだから、自分の至らなさを認め、お客様や部下の声を真摯に聞く素直さが大切になるというのです。

そのうえで“努力”をする。「皆さんリーダーが先頭に立ち、誰にも負けないような努力をしなくてはなりません。部下が見てあそこまで上司が必死にやっているなら、自分も頑張ろうと自然に思えるくらいに努力する必要がある」というのです。

それに加え、「それぞれの職場の夢を部下に語れる人でなくてはなりません。今は大変厳しいけれど、これを乗り越えた暁には自分の職場は『こうしたい』と明るく夢を語り、それを部下全員と共有できるようにしなくてはなりません。夢があれば、それがエネルギーとなり、職場を明るくするはずです」と、“夢”を語る意義を伝え、励ましています。

感謝することで人は謙虚になれる

また、お客様や取引業者など関係するすべての人に“感謝”することの大切さも強調しています。「感謝することで、人間は謙虚にもなれ、優しくなれる」からです。

『運命をひらく生き方ノート(約三十年、稲盛和夫氏のもとで学んだこと)』書影
『運命をひらく生き方ノート(約三十年、稲盛和夫氏のもとで学んだこと)』(致知出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

このような姿勢で再建に取り組まなければいけないのですが、欠かせないのが“経営者意識”と“採算意識”だと稲盛さんは指摘しています。

「再建を成功させるためには皆さんが『経営者意識』、『採算意識』を持つことが不可欠になる」と強く訴えたのです。幹部の人たちが採算管理もできる経営者に成長できれば、結果として各部門の収益性も向上し、その集合体としてJALの収益性も高まるというのです。

こうした稲盛さんの一連の発言のなかにある「気概、反省、謙虚、勇気、素直、努力、夢、感謝、経営者意識、採算意識」という10の言葉は、どのような事業であれ、それを再生させるキーワードになると私は考えています。

大田 嘉仁
おおた よしひと / Yoshihito Ohta

昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐専務執行役員に就任(25年退任)。27年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任。令和元年MTG取締役会長就任。現職は、MTG相談役、立命館大学評議員、鴻池運輸社外取締役、新日本科学顧問、日本産業推進機構特別顧問など。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)、『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』(三笠書房)などがある。

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