"通"のためのフェラーリ「12チリンドリ」の魅力 ブランドの象徴、V12エンジンを積む最新車種
この手のイベントとしては珍しいルクセンブルクで開催された国際試乗会で、初めて12チリンドリのステアリングを握ることができた。その走りの印象は、まさにオーセンティックなV12フェラーリというものだった。
6.5Lという大排気量の自然吸気V12ユニットは、実に9500rpmという高回転まで回り、最高出力は830CVにも達する珠玉のエンジン。そのフィーリングは至極滑らかで、アクセルペダルを深く踏み込めば、管楽器かのようにそれこそ100rpmごとに音色を変化させながら、淀みなくトップエンドまで回り切る。これは、仮にV12であってもターボチャージャーなどの過給器付きにはない世界と言える。
ただし、そのときのサウンドは一般にイメージされるような爆音が炸裂するという感じではない。もちろん、それは騒音規制への対処によるところもあるが、それだけでなくグランツーリスモという性格付けからあえてそうしたのだという。
V12を堪能できる無類の安定感
思えば、私が知る限りでも往年のV12フェラーリの多くは、そうした要素を色濃く持っていた。結果として、迫力に気圧されるばかりでなく、音色そのものを堪能できることに繋がっていて、個人的にはこの味付け、とても好印象だったと言っていい。
シャシー性能も秀逸だった。ねじり剛性を812スーパーファスト比で15%向上させたというアルミスペースフレームを用いたボディは剛性感に富み、乗り心地は上質。俊敏性を高めるためホイールベースを20mm短縮するも、後輪を左右独立して操舵する機構の巧みな制御もあり、コーナリングではシャープに反応する一方で、高速域ではむしろ無類の安定感が醸し出される絶妙な味付けとされている。
前作812スーパーファストや、あるいはさらにその前のモデルになる「F12ベルリネッタ」の鋭すぎるほどの切れ味に比べれば、やはりだいぶ落ち着いた感じ。しかし、そのほうがかえって思い切りアクセルを踏み込んで、V12を堪能できるというものだ。
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