"通"のためのフェラーリ「12チリンドリ」の魅力 ブランドの象徴、V12エンジンを積む最新車種

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クローズドコースでフルパフォーマンスを引き出す。非常に高いコントロール性能にはうならされる(写真:フェラーリ)

試乗ルートにはクローズドコースも含まれていた。実はそれこそがルクセンブルクが選ばれた理由で、彼の地にはこの12チリンドリのタイヤサプライヤーのひとつ、グッドイヤーのテストコースがあり、そこでフルパフォーマンスを引き出す機会が用意されていたのである。

曲がりくねったセクションと長い直線が組み合わされたコースで、12チリンドリの非常に高いコントロール性にうならせられた。後輪操舵が利き過ぎという感もなきにしもあらずだったが、とにかくよく曲がり、しかも安定している。挙動が落ち着いているから、テールが滑り出しても余裕で対処できる。

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そして直線でアクセルペダルを床まで踏みつけたら、すんなり300km/hの大台を突破してみせた。しかも、ドライバーに緊張を強いることなく、クルマとしてはまだまだ余裕と言わんばかりに、である。

極上レベルまで研ぎ澄ませたフェラーリの歓び

オーセンティックとは書いたが、単に古典的というわけではなく、最新の技術とノウハウによって、フェラーリの普遍的な歓びを、極上のレベルまで研ぎ澄ませた。12チリンドリは、そんなふうに評するのがしっくりくる。

研ぎ澄まさせたが故に、あるいは脳天を直撃するような刺激を求める人にとっては物足りなくも感じられるかもしれない。しかし、そんなことはフェラーリとしては百も承知のはず。おそらくターゲットとする、フェラーリの何たるかを知り、日本では5674万円というお金を投じることができる人は、ガレージに他に刺激的な跳ね馬を1台か2台か、あるいはもっと並べてある。12チリンドリは、そんな人が日常の中で、あるいはスピードを求めない週末に楽しむためのフェラーリなのだろう。

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ここに来てヨーロッパでは電動化への動きに揺り戻しが起きており、クルマの動力源の将来を見通すのは、それこそ3年後のことであっても難しくなっている。そんな中で、フェラーリは象徴であり魂であるV12の自然吸気エンジンを今後も可能な限り維持したいと公言している。

ある意味で解脱したかのような世界観を表現した12チリンドリに乗ったあとでは、これが最後でもおかしくないと感じる一方、いや、だからこそ次を見てみたいという気にもさせられた。さて未来はどうなるだろうか。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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