ヒット作を量産「縦スクロールマンガ」の"舞台裏" ブームから1年、月1億円以上売り上げる作品も

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何を心がけて作品をつくっているのか?という私の問いに対して、小林氏はこう答えています。

「まず、100作品のウェブトゥーンを編集者と、神血の原作者であるジャンプ出身の江藤俊司氏と一緒に読み合わせ、当たる作品というよりは、外れる作品の法則を読み取りました。そこから導き出した考え方として、ハンバーグを食べたい言ってくれている人に、奇をてらわずに、国産牛のハンバーグをしっかり焼き上げ、変化球の味付けではなく、最もスタンダードなデミグラスソース味のハンバーグをしっかりつくって、読者にお届けする。このことが大事だと考えています」

とのことでした。一言でいうと、ベタが大事ということです。

ウェブトゥーンを取り巻く環境

ここには、さまざまな要素があると思います。

もともとマンガの世界は「千三つ」といわれ、たくさんの多様な作品をつくって、しかも長い時間をかけてヒット作品が産まれるということがいわれてきました。参考に、メガヒットということでいうと、週刊少年ジャンプで『ドラゴンボール』が産まれるまでに創刊から約25年、近年一番の大ヒットである『鬼滅の刃』は、50周年前後でヒットしたというものです。

これらはあまたの作品がつくられたベースのうえでの、円熟の上に出てきている作品だったと思います。

ここでいう25年、50年という歳月の中には、1969年の週刊少年ジャンプ創刊の頃、まだまだマンガは子どもたちだけが読むものであった時代から、マンガを読む世代が広がり、読者が十分に育った状況が現在であるという点も大きいと思います。

そして、今の日本のウェブトゥーンを取り巻く環境は、横と縦の違いはあれど、マンガやウェブトゥーンに触れてきた、多くの読者やクリエイターがいる状態からのスタートになります。

そのなかで「デミグラスソースハンバーグ」のような作品を、それが読者の求める作品であると見極めること。および、それを確実につくっていく技術をスタート時から揃えていたことは、第一に当事者であるナンバーナイン社の努力ではありますが、第2に日本にはそうした、作品づくりや原作者と編集者が歩調を合わせてヒットを目指すという下地が人材含め十分にあったということがいえるのではないかと思います。

現在、国産ウェブトゥーンスタジオで頭角を現しているには、必ず何か下地があるように筆者は見ています。

ナンバーナインは、同社代表の小林琢磨氏が最初に起業したサーチフィールドの時代から、イラスト制作などのマンガに近しい領域で実績がありました。

その後の同社創業時からは、電子コミックのエージェントをしながら作品制作などにも携わるなど、マンガに対する理解度が高い企業です。

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