介護保険を「撤退戦」から守るたった1つの方法 一段と強まる給付削減と介護報酬の伸び抑制
次のスライドには、賃金システムの欠陥を補う再分配制度、サブシステムの全体像を描いていますが、介護保険のところに20歳から39歳でブランクになっているほうが不自然です。
だから、私は、昔から、このブランクを埋めようと言っている。
ところが、世の中の人たちは、年金は長期保険、医療や介護は短期保険と信じ込んで、介護には若い人たちの給付がないからといって、40歳以上のところに加齢を原因とする特定疾病という実に不自然な仕組みをもってきて、介護保険の被保険者を40歳以上からとしている。
最後に、介護保険に新たな財源を得る方法として、被保険者の拡張以外に、介護関係者がよく言われる公費負担割合を増やすという話があります。この案に、私は反対はしませんし、陰ながら応援もします。
給付削減・抑制の圧力とどう戦うか
今の世論の有り様、そしてこれまで長く給付を先行して作り上げてきた給付先行型福祉国家日本の財政状況を考えると、今後は高齢化で増えゆく公費の削減圧力が一層高まると思います。そのために、給付の削減と介護報酬の伸びの抑制圧力が、今よりも高まると思います。
財源調達に関する判断というのは一種の総合格闘技のようなもの。四半世紀も前に書いていたように「目標と現実と実行可能性とに制約された術(アート)」のようなもので、さまざまな知識と経験の総合的な判断に基づくものになります。
私の読みでは、介護保険の財源を確保していく戦線は、公費負担割合の引り上げ辺りではない。読みは外れるかもしれないが、私は、介護保険の被保険者の拡張の戦線に、ひとりでもいいので居続けようかと思っています。他はご自由に。
昨年5月に、子ども未来戦略会議の第4回会議に意見書を提出していまして、その中に、公的な医療、介護、そして年金があるために使われないままに家計に残った資産が、相続人にわたる前に、その幾分かを社会保障目的税としていただけないだろうかという話を書いています。これは何十年も言い続けてきました。
介護保険や高齢者医療で高齢化を原因として今後増えていく国庫の部分は、そうした形で賄っていくから、あんまり査定を厳しくしないでくださいねという感じでしょうか。
その一方で、介護保険は賃金の欠陥を補うサブシステムなのだから、今回の支援金と同じように、医療保険賦課ベース全体を活用するようにしようとも言い続けていきたいと思っています。
もし実現できれば、介護保険における協会けんぽの第2号保険料率、65歳以上の第1号保険料はともに2割強下げることができるし、新たな財源を給付に回すのであれば、その分、介護保険を撤退戦から守ることができます。
時間になりましたので最後に——。財源さえあれば、介護保険をこんなはずじゃなくしている厚生労働省老健局も財務省も、いい人になると思いますよ。
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