介護保険を「撤退戦」から守るたった1つの方法 一段と強まる給付削減と介護報酬の伸び抑制
今の時代は、この再分配としての社会保障が政府活動のメインです。GDP(国内総生産)の2割を占めています。そうであるのに、多くの面で、政府の歳入と歳出を分けて議論している。それはおかしいだろう。そのような問題意識から、第2回政府税制調査会(2024年5月13日)で、私は次のように話しています。
所得再分配がメインである今の政府活動を考えれば、本当は、老健局、保険局、年金局、それにこども家庭庁のように、給付と財源をセットに議論しなければならない。そういう話を、歳入にのみ焦点を当てた税制調査会で話しています。
社会保障が行う時間的、保険的再分配
特に社会保障の財源調達のあり方を考えるうえでは、「消費の平準化」という考え方を理解してもらいたい。
この図の青い折れ線グラフは、年齢の高い人たち(左側)から人口を累積していったグラフ、グレーの折れ線グラフは、年齢の高い人たちから医療給付費を累積、オレンジ色のグラフは、介護保険給付費の累積グラフです。
この図では、65歳以上の人は29%です。そしてその29%の人が医療給付費の61%、介護給付費の95%を使っている。加えて、年金給付の83%ほどが老齢給付です。
要は、高齢期にどうしても必要となる消費に若いときから長く関わって、毎年の負担を低く抑えているわけです。これをわれわれの世界では消費の平準化、Consumption Smoothingといいます。
社会保障給付費の9割ほどが社会保険で、社会保険のほとんどは消費の平準化を果たしています。多くの人が勘違いしているのですが、社会保障、特に社会保険は、高所得者から低所得者に所得を垂直的に再分配するのがメインの仕事ではありません。
メインは、1人の人間の時間的、保険的再分配です。
ちなみに垂直的再分配がメインの生活保護は社会保障給付費の3%程度です(「社会保障は金持ちから貧困層への再分配にあらず」)。
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