三菱MRJは「10月離陸後」に正念場を迎える 最大の難関は安全認証の取得

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MRJの開発作業において、初飛行の後には2つの大きな仕事が残っている。まず、機体の完成度を高めること。飛行結果をもとに必要な改良を施し、最終設計に仕上げていく必要がある。そして、もう一つの大きな仕事は、飛行試験で集めた膨大なデータを使って安全性を客観的に証明し、「型式証明」と呼ばれる機体の安全認証を最終的に国から取得することだ。この型式証明取得が旅客機開発のゴールで、かつ、最大の難関でもある。

こうした作業を効率よく進めるため、三菱航空機では飛行試験用の実機を5機製作しており、地上での安全確認作業が済み次第、飛行試験に順次投入する。来年夏からは飛行区域や時間帯の制約が少ない米国に舞台を移し、日米で延べ1500回、合計2500時間に及ぶ飛行試験を実施する計画を組んでいる。

ANAへの納期は1年半後、もう遅延は許されない

県営名古屋空港のすぐそばでは、MRJ量産用の最終組立工場の建設が進んでいる

ただし、旅客機の開発においては、実際に飛んでみるまで分からない部分も多い。

これまでの開発作業は、あくまで地上におけるシミュレーションの世界だった。実際の飛行で想定外の大きな問題点が顕在化し、大掛かりな設計変更を余儀なくされる可能性もある。

「問題点が見つかれば、その一つ一つに対処していかないといけない。開発作業を登山に例えるなら、初飛行はまだ全体の6合目辺りに位置する」(岸社長)。

現在のスケジュールでは、最初の納入先となる全日本空輸(ANA)への量産初号機引き渡しは2017年4~6月の予定。逆算すると、初飛行から納入までの期間は1年半程度で、日程としては非常にタイトだ。しかし、これまでの度重なるスケジュール延期でANAへの納期は当初計画から4年も遅れているだけに、さらなる納期遅延は許されない。

限られた時間の中で、すべての開発作業を終えて型式証明を取得し、約束している納期を守れるか――。半世紀ぶりとなるMRJの開発作業は、これから本当の正念場を迎える。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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