MRJは三菱の航空機事業に何をもたらすか 三菱重工のキーマン、鯨井洋一副社長に聞く
――三菱重工におけるMRJの位置づけをあらためて聞かせてください。
当社の航空機ビジネスは歴史的に防衛省の仕事を主体にやってきた。一方、民間分野ではボーイング旅客機の胴体や主翼の受託製造を手掛けているが、その売上高は直近で年間2000億円程度。連結売上高(3.3兆円)に占める比率を考えると、まだまだ基幹事業にはなりえていない。そこにMRJの完成機ビジネスが加わることで、民間航空機事業の規模は大きく成長し、本当の意味で柱になる。
質的な重要性も大きい。旅客機メーカーになるということは、自らがインテグレーターとなって機体をまとめ上げ、それを自分たちで造り、世界中のお客さんに販売していくということ。事業の層の厚み、グローバル性、主体性といったいろんな面で今までとは大きく異なる。つまり、MRJで、三菱の民間航空機事業は質的にもより高いレベルへと大きく変わる。
ひとまず安堵だが、あくまで通過点。
――どういう思いで今回のロールアウトを迎えましたか?
大変なことは覚悟の上での挑戦だったが、予想以上の苦労と時間を強いられ、お客様をはじめ、多くの方々にご迷惑とご心配をおかけしてしまった。ようやく試験用の初号機完成まで漕ぎ着けることができ、ひとまず安堵した、というのが正直なところ。
ただし、MRJのプログラム全体からみると、今回のロールアウトはあくまで通過点。実際の納入までには、長時間に及ぶ飛行試験を行い、最終的には安全認証(型式証明)を取得する必要がある。これから先が本当の正念場だ。改めて気を引き締め、目標とする17年上期中の納入開始に向けて、着実に開発作業を進めていく。
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