昭和シェル、ソーラー子会社はどう戦うのか 厳しさを増す太陽電池市場

拡大
縮小

――最近は太陽電池各社がそろって住宅市場に注力しており、蓄電池や家電製品を含めたシステム化で、付加価値を高めようとしている。

本来あるべきところに戻りつつあるというのが正しい理解だろう。太陽光の最大の強みは発電を分散させることであり、それらを寄せ集めて大型発電所にするという考え方自体はやや傍流といえるが、現実にはそれで需要の大宗が作られてきた。だが将来的には、分散型という力を発揮して、電力系統への負荷を小さくするためにも、FITによる売電ではなく、自己消費型の発電へと移っていくはずだ。できるだけ低コストで発電し、自家用に消費して、不足する電気を外から取り入れるという形を達成することが最大の目標になる。

当社は、システムの中核を担うモジュールにおいて圧倒的なコスト競争力があると自負している。そのため、経営の健全性を確保したうえで、他社に先駆けて住宅用のグリッドパリティ(平均的な電気料金と同等以下のコスト)を実現できると思っている。グリッドパリティを実現したうえで、さらに付加価値のあるシステムを加えていけるかが課題だ。

業界他社の家電メーカーとは違い、さまざまな会社としがらみや制約もなく組むことが当社は可能だ。蓄電池などを内製していない分、逆にフリーハンドで他社と組める。常に関心を持って、他社との連携の可能性を探っているところだ。今後は金融系のパートナーも重要で、システムでの購入で総額が増える分、顧客の支払いの利便性を高めていくことも価値提案の一つとなる。

BOT事業がもう一つの柱

――住宅向け強化以外の対策は。

BOT事業の拡大だ。国内では政策投資銀行と共同でファンドを設立したり、長崎空港や平泉など各地でメガソーラーを開発したりしており、今後も継続していく。設備認定済みだが資金調達難などを理由に着工に至っていないような案件を当社が引き受けることも含め、国内でのBOTを広げていきたい。

その一方で、国内で培った知見や関係会社とのパートナーシップを生かして、BOTの海外展開をしていく。すでに米国では合計280MW規模の発電所開発プロジェクトを買収(2015年3月に最終合意)しており、英国でも合わせて100MW規模のBOTを推進している。また、タイなどアジア太平洋地域においても可能性を探っている。

もちろん、BOTにはファイナンスを含めて開発案件の組成から完成までのリスクがあるが、蓄積した知見と技術力で十分マネージできる。その一方、モジュール販売だけでは取り込めないEPC(設計・調達・建設)などのマージンを加えることで、モジュールの価格競争から脱却し、より高い付加価値を実現できる。また、当社のCIS薄膜太陽電池の強みは発電性能にあり、発電所まで造って発電量の実績を示すことで、買い手の信用が高まり、製品性能に合った価値で評価してもらえるようになる。

――米国などでは太陽光発電所はまだまだ拡大が続くのか。

パネル供給をした太陽光発電所(米国カリフォルニア州)

米国では当初、来年末に投資税額控除が縮小することで太陽光への投資が落ち込む懸念もあったが、オバマ政権はここにきて再生可能エネルギーの導入をより積極化する姿勢をみせている。オバマ氏の後継と有力視されるヒラリー・クリントン大統領候補も、就任後10年以内に米国内すべての住宅に十分なクリーンエネルギーを供給する目標を掲げている。また、多くの州でRPS法(電力会社に対する一定割合以上の再エネ利用の義務化)が導入されていることも、太陽光拡大の追い風となりそうだ。

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