JR西の新観光列車「はなあかり」完成までの舞台裏 車内のサービスは日本旅行のツアコンが担当
目指すはグランクラスに見劣りしない客室の実現。そこで、1人当たりの占有面積をできるだけ広くすることにした。はなあかりの1両当たりの定員は単純計算で18人。通常ならこのタイプの車両には50〜60席が配置されるので、確かにゆったりとした配置であることがわかる。いすにもこだわった。グリーン車のいすはいろいろな向きで座れるように360度回転し、座面を従来のいすよりも低くしてゆったりと座れる。スーペリアグリーン車はオール個室でいすは本革製だ。
一方で、課題もあった。1人当たりの占有面積を広く取るために前後の座席の間隔を広げると、窓の間隔と合わなくなってしまう。鉄製の車両であれば窓の開口部分の改造は容易だが、キハ189系はステンレス製。材質の特性上、溶接が難しく改造が容易ではない。そのため、「窓の割り付けにいすの配置をどう合わせるかには苦労した」と川西氏が振り返る。
スムーズだった車両改造
スーペリアグリーン車の個室には工芸品アートを展示することにした。現在は越前や丹後の工芸品アートが飾られているが、「将来、別のエリアを走るときは沿線に合わせた展示を目指したい」(緒方氏)。
その意味で、車両の外観や内装に描かれている花や草木も特定の地域を象徴する植物ではない。「その辺の野原や畦道などどこにでもある花をモチーフとしてアレンジした。具体的なイメージはない」と川西氏は話している。また、家具、座席、テーブルなどの素材には福井産のヒノキや鳥取産の杉、調度品などには出雲たたら製鉄の一輪挿しなど西日本エリア各地の素材が使われており、「西日本の“とっておき”にあかりを灯す」というコンセプトを体現している。
客室内のカラーリングについては、川西デザインのウエストエクスプレス銀河では明るい基調の色が多用されたが、今回は落ち着いた配色だ。「ほかの観光列車には使われていない色で攻める」「長期間にわたって使う中で美観を保てる色にする」などさまざまな意見を集約して今回の色に決まったという。
こうした車両開発のコンセプトが決まり、いよいよ施工となるわけだが、施工時に苦労した点はなかったのだろうか。施工はJR西日本グループで車両の改造工事などを行う後藤工業が担当しているが、同社車両部計画課の長谷川慎司氏は「とくに苦労はありませんでした」とあっさりと答えた。
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