JR西の新観光列車「はなあかり」完成までの舞台裏 車内のサービスは日本旅行のツアコンが担当
本当だろうか。他社の観光列車では施工に苦労したという話をよく聞く。JR西日本でもウエストエクスプレス銀河のときは施工時に車両限界が超過し、その修正に時間を要するなど無駄な工程が多く発生したという。
そこで、設計から施工への流れをあらためて聞いてみると、「現場の声を設計図面に反映させる取り組みを積極的に進めた」とJR西日本グループで車両の設計・製造・保守などを担当するJR西日本テクノス車両事業部技術部車両設計室の関岡樹氏が述べた。
通常なら、設計者が作った図面どおりに施工しようとしてもうまくいかない場合があるが、今回は事前に段階を踏んで施工担当者に図面を見てもらい、「こうしたほうがいい」「この構造は難しい」といった施工担当者から見た課題の洗い出しを行い、事前に図面に反映させた。また、実物大のモックアップも作成して、構造やスペースの検証も行った。確かにそれなら、施工で戸惑うことはない。過去の反省を生かし、設計段階で施工担当者とのコミュニケーションを密に取った結果、トラブルなく完成に至ったというわけだ。
車両は「重箱」中身は地域で
サービス面でも大きな特徴がある。車内のおもてなしをグループ会社の日本旅行が担当するのだ。今回乗務するスタッフはツアーコンダクターの資格を持っているといい、単にものを売るだけではなく、旅行の行程に関するアドバイスも期待されている。確かに、多くの観光列車では車掌や物販関連のスタッフがアテンダント業務を行っており、旅に関する質問をしても、的確に回答してもらえない例も少なくない。旅行会社のツアコンが乗務するならその心配はない。グループ内に大手旅行会社を抱えるJR西日本ならではの強みといえる。
このように新しい取り組みによって完成した列車であるが、開業を迎えてもなお川西氏は「まだ完成ではない」と言う。ではいつ完成するのかと尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「たぶん完成はしないと思う。なぜなら進化し続けるから」
そしてこう付け加えた。
「たとえて言えば僕らは重箱を作った。中身は地域のみなさまに作ってほしい。観光列車でいちばん重要なのは地域と鉄道が接点を持つこと。地域のみなさまに“自分ごと”として捉えていただけるかどうかが重要なのです」
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら