なぜカープは「非合理的な盗塁死」を繰り返したか 「伝統を重んじすぎて失敗」は企業でも存在する

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確かに一時的に気分は変わるかもしれないが、こうしたその場しのぎの変更は、決して長続きすることはない。なぜ組織が停滞しているのか、目標を達成できないのか。その原因分析や追求をとことん行わない限り、成果は生まれない。

突き詰めると、こうした事態が起こるのはトップ層がリスクに対して過敏になってしまい、冒険ができない性格だからだと考えられる。そのため、小手先の変化をだましだましやる、という結論になってしまう」

思えば、打線のテコ入れが急務と思われる中でも、新井監督は不調の坂倉に対して「逃がさんぞ、と思っている」と語り、起用を続けた。また、代打の切り札・松山竜平を筆頭に、田中広輔、上本崇司、堂林翔太といった“実績組”のベテランに期待する采配が目立った。

もちろん、時には辛抱強く耐えることも必要だが、危機だからこそリスクを取ってでも新しい風を吹かす。そのような勇気が、リーダーには求められるものであり、これは野球にもビジネスにも共通する。結果から見れば、今季の新井監督には、そういった大胆さも必要だったのかもしれない。

伝統に縛られた非合理な「盗塁」が得点不足を加速

日替わり打線問題の他、特にシーズン序盤~中盤のカープ野球で目立ったのが「盗塁死」である。カープといえば足を絡めた「機動力野球」のイメージもあるが、実態は違う。過去3年を見ても盗塁数がセリーグトップだったことはない。

データを見ると、そもそもカープは盗塁が苦手な感もある。3連覇を果たした2016~2018年こそ、いずれも盗塁数はリーグトップだったものの成功率がリーグ1位だったのは2017年のみ。2016年、2018年ともに成功率はリーグ4位に甘んじている。

今年の話に戻ろう。10月1日終了時点で、カープの盗塁数は64で、失敗が51。成功率は55.7%である。成功数はリーグ2位であるものの、成功率は下から2番目で「数打ちゃ当たる」状態といって差し支えないだろう。

新井監督は、監督就任時に機動力野球の復活を掲げた。しかし、就任した2023年の成功率がリーグ4位、今季も上述の通りで、データからは「向いていない」という結論を出さざるを得ない。

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