CR-Vは燃料電池車の「死の谷」を超えていけるか? クルマの出来は上々だが燃料電池普及の道は…

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2015年には、「水素元年」と称して日本政府が新たな水素戦略を掲げ、まずはトヨタ「MIRAI」が登場。当時、トヨタ本社の近隣で詳しく取材したが、担当主査は「見た目も走り味も、普段づかいできる、かっこいい乗用セダンを目指した」と開発コンセプトを熱く語っていた。

その翌年の2016年、ホンダも「乗用としての使い勝手と、スポーティで先進的な外観」を兼ね備えた2代目クラリティを世に送り出す。

2代目「クラリティ」には、FCEVのほかPHEVとBEVも用意された(写真:本田技研工業)
2代目「クラリティ」には、FCEVのほかPHEVとBEVも用意された(写真:本田技研工業)

だが、FCEVは、いわゆる「死の谷」を越えられなかった。死の谷とは、市場で普及するためのコストや社会受容性のハードルを指す、マーケティング用語だ。

FCEVは少量生産でコストが高く(=新車価格も高い)、FCEV専用の水素インフラの拡充もネックとなった。

そうした死の谷を越えるためにホンダが選んだ道が、GMとの共同開発だ。互いの知見を持ち合い、そして量産効果によってコストを下げようという目論見である。

すでにコストは1/3。さらなる量産効果を目論む

2社の関係は2013年から始まり、その成果がホンダでいう「第2世代・燃料電池システム」として結実。2社の合弁企業、フューエル・セル・システム・マニュファクチャーリング(ミシガン州ブラウンズタウン)で、2024年1月から燃料電池システムの生産を開始した。同施設では、 CR-V e:FCEVの最終組み立ても行う。

今回の試乗会場でホンダに確認したところ、生産能力は年間約600台で、このうち日本向けは70台とのこと。この数字だけ見ると、ホンダにとっての燃料電池車は「死の谷を越えていない」という印象を持つかもしれない。

今回、テストした「CR-V e:FCEV」の内装。FCEVだからといって特別な部分はない(筆者撮影)
今回、テストした「CR-V e:FCEV」の内装。FCEVだからといって特別な部分はない(筆者撮影)

ただし、燃料電池システムのコストは、先代のクラリティと比べて1/3まで下がっている。さらに今後、燃料電池システムの外販(B2B:事業者間取引)に注力することでの量産効果も期待されているのだ。

ホンダが2023年2月に公開した水素関連事業のロードマップでは、燃料電池システムを乗用車のみならず、トラックなどの商用車、定置型電源、そして建設機械向けにも外販し、2025年に2000基/年、2030年には6万基/年の需要を見込むとしている。

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