CR-Vは燃料電池車の「死の谷」を超えていけるか? クルマの出来は上々だが燃料電池普及の道は…

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さらに、グローバルで「量産車の100%をEVまたは燃料電池車にする」と宣言している2040年に向けては、数十万基/年を目標に掲げているのだ。

また、2030年代以降の燃料電池は、現在GMと研究開発中の第3世代となり、第2世代と比較してコストを半減し、耐久性を向上させるという。

果たして、こうしてホンダが描くような“燃料電池車の未来”はやってくるのだろうか。仮に普及したとして、その中で乗用FCEVの比率はどの程度になるのか。

燃料電池は長時間の連続稼働に向いており、大型ディーゼルエンジンの代替にも適しているといえる。こうした領域では、EVなどバッテリー事業との差別化がしやすい。

「CR-V e:FCEV」では水素燃料タンクにより荷室のスペースが制限される(写真:本田技研工業)
「CR-V e:FCEV」の水素タンクは2つあり、ひとつは後席下、もう一つが荷室部分。荷室スペースを有効利用するため専用の仕切り板を採用してユーザーの利便性を上げた。ゴルフバック3個搭載可能(写真:本田技研工業)

一方で、乗用領域では、各種バッテリーの技術進化とコスト削減、また充電インフラの拡充などにより、旧来の「EVは短距離移動向け、FCEVは長距離移動向け」という考えが通用しなくなってきた。

そうした状況で世に出た、ホンダCR-V e:FCEV。開発責任者の生駒浩一氏は、試乗の合間の意見交換の中で、「水素が(世の中で)どのように使われるのか。(また、人々が)水素をどう使いたいのか、そうした考え方が混じり合っている状況」だと、FCEVを取り巻く環境を表現した。

そして、「FCEVが(世の中に)さらに広がっていくのか、今はその瀬戸際にいる」という見解を示す。

さらに燃料電池が大型ディーゼルエンジンの代替に適すという認識が浸透する中で、「乗用車のFCEVという選択肢がなくていいのか、まだ(世の中に)答えがない。だからこそ、このクルマのように、ユーザーがいろいろな使い方をできるクルマが、いま必要だと思う」と、開発者としての胸の内を明かした。

クルマそのものの出来は悪くないだけに、燃料電池の可能性はさらに議論すべきだろう(写真:本田技研工業)
クルマそのものの出来は悪くないだけに、燃料電池の可能性はさらに議論すべきだろう(写真:本田技研工業)

まだ道半ば。さらなる議論を

今回の北海道取材を通じて、筆者は改めてエネルギーマネージメント事業の必要性を感じた。

燃料電池の外販シフトが進んでいく中で乗用FCEVが普及するには、単なる完成車販売・リース販売ではなく、エネルギーマネージメントのサービス事業として、B2Cの斬新なビジネス設計が必須だと思う。

そのためには、B2Bの知見や量産効果が生かされるだけでなく、産学官連携でこれまで以上に水素インフラのあり方について深い議論をしていく必要があるだろう。ホンダの乗用FCEVの行方を、これからもしっかり追っていきたい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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