彼女が取材した患者、臨床医、研究者たちの言葉や、実施した大規模な研究調査の結果からも、身近であるがゆえにアレルギーを軽視しがちな私たちの姿勢と、そこからもたらされる危険が描き出されている。自己判断による市販薬のむやみな使用や、裏づけの乏しい自宅用検査キットの氾濫も、その一環といえるだろう。
重荷を抱えて生きる患者が見通す未来
医療人類学者であり、自身もアレルギー患者であるマクフェイル氏は、著書『アレルギー』の中で読者にこう語りかける。
特定の場や物質を避けなければならない煩わしさ。いつどこで発作の引き金が引かれるかわからない恐怖。
アレルゲンや症状、重症度は異なれど、これらはアレルギーを抱える人々に共通の感覚ではないだろうか。
「アレルギーに苦しむ人々の大半は、調子が『とても良い』状態を期待することはやめてしまい、調子が『悪くはない』状態で人生の大部分の日々を過ごせればそれでいいと妥協している」とマクフェイル氏は言う。
『アレルギー』は、21世紀におけるアレルギー問題の背景を探るマクフェイル氏の、個人的でありかつ科学的な旅路の記録だ。
食物アレルギー、皮膚アレルギー、昆虫アレルギー、薬品アレルギー、呼吸器アレルギー……マクフェイル氏が取り上げるアレルギーは多種多様だ。だが、それらには皆、社会構造とライフスタイルの急激な変化という共通の要因が関わっている。
変わりゆく世界の中で、私たちはアレルギーと共にどう生きていくのか? 本書には起こりうる未来の姿が描かれている。
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