働き盛りがなぜ死を選ぶのか 岡田尊司著

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日本人は、自らその悪循環を続けているのだ。著書によれば、実は日本の資本、技術、インフラはまだまだ世界トップ水準であり、そこまで悲観するほどの末期的状況ではないという。にもかかわらず、デフレと日本人の悲観的態度による悪循環が、潜在成長力を持つこの国を、本当にダメな国にしかけていると著者は嘆く。

精神科の著者に言わせると、国全体が長いことうつ病にかかっている状態なのだという。例えば、人口減少社会によって貧しくなるという考え方が蔓延しているが、うつ病における“認知のゆがみ”(=過度な思い込み)ではないかと著者は疑問を投げかける。人口が減少してもGDPが成長したアイルランドの例などもあるからだ。

このように、過度に悲観的で否定的な“認知のワナ”に陥っていることを自覚し、自己否定や自信喪失に陥ったりする
必要はないと知ることが、デフレ脱却=自殺減の鍵になると著者は強調する。

後半では、若者から高齢者まで人材をフル活用した、生産性の高い完全雇用システムの必要性についても述べている。人が生きる意欲を失うことのない、本当の豊かさを実現する社会の在り方まで提言している。

あとがきには、東日本大震災を受け、こうも記されている。「むしろこれを再生の好機として捉え、この国を根底から作り直していかねばならない。(中略)問題を回避し、先延ばしし、根本的な手立てを取ろうとしないという体質を変えなければならない」。

希望を失い下を向いて暮らしている国民だけでなく、国民の大切な命を預かっている国の指導者たちにこそ読んでいただきたい一冊なのかもしれない。 

角川ONEテーマ21 760円

(フリーライター:佐藤ちひろ=東洋経済HRオンライン)

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