本書の序盤に、オックスフォードのビジネス講座において、受講者を35人から40人に増やしたところ、クラスの連帯感や仲間意識が生まれなくなったということが書かれています。
こういったことは、みんな現場で直感的に知っているのではないでしょうか。集まるのが5人ぐらいなら話ができるけど、7人になると3人と4人に分裂してしまうというような経験はあるでしょう。
それを単に直感に終わらせず、その理由を知り、人をまとめるためにはこうしなければならないという考え方を持つようになれば、「ダンバー数」はもっと使われるようになるでしょう。
「進化経済学」や「進化法学」という分野も
本書のように、研究者とビジネス関係者がタッグを組むのは良いことです。学問の世界と、会社、役所など他のセクターとはまったく違います。縦割りになっていて、それぞれに専門用語があるので、壁が崩れず、横のつながりを作ることが難しいのです。
人類が進化してきた過程を、30万年、200万年という長さで考え、この脳や身体がどういうふうにできてきたのかを知った上で、現代のいろいろな問題を考える。そういう観点から、進化経済学という学問の分野などが出てきました。
最近では、なぜこのように法律ができているのか、なぜ民法はこうなっているのかという点を進化的な流れから考える、進化法学という分野もあります。人間の脳によるカテゴリー化が、どんな方向にバイアスがかかるものなのかを考えると、見えてくるものがあるのです。
進化経済学、進化心理学、進化社会心理学など、学問の分野の中でも少しずつ融合しはじめています。人間のことを考える学問は、人間がどうやって進化してきた産物なのかを知らずして論を立てても、どこかほころびるものではないでしょうか。机上の空論ではダメだと思うのです。
進化生物学は、広い意味で過去の歴史ですから、事実をつかみ取って「こうだ」と言うことはなかなかできません。しかし、化石があり、遺跡があり、現在を生きている人間たちの脳や遺伝子などの証拠を集めて考えると、「これがいちばん良いシナリオではないか」というものが言える。これは、実証科学なのです。
(構成:泉美木蘭)
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