石破茂氏に捨て駒としての価値を見た自民の冷徹 沈没の危機に瀕した党が繰り出す奥の手が炸裂

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一方、石破氏は「安保・軍事オタク」と呼ばれるように、自他共に認める政界有数の安保問題専門家だ。もう一つの特徴は「理詰めの人」である。インタビューでも「何でも自分で抱え込む。どうしても理屈が先に立つ。理屈で納得しなければやりませんので」と自己分析を披露した。

これまで石破氏には「運」がなかった

「理屈の壁」が災いした感もあって、石破氏は安倍内閣時代の2016年8月以降、計8年、無役となり、「冬の時代」を送った。2012年9月の総裁選の決選投票で安倍氏に逆転負けして政権を逃してからは、「不運の政治家」のイメージが定着した。

2024年8月14日に岸田首相が9月の総裁選への不出馬を表明したとき、真っ先に思い出したのは、2022年7月8日に不慮の死を遂げた安倍氏がその約1カ月前、都内の会合でのスピーチで口にした言葉だ。政治のトップリーダーが具備すべき条件として、笑いながら「運と多少の人柄」と述べた。

首相の座を担うには、「運」「人柄」だけでなく、「実力」が必要だが、安倍氏の言葉どおり、「運」と「人柄」も不可欠の要件だろう。その点でいえば、今回の2人は総裁選前、政界では石破氏は「運がない」、高市氏は「人柄に難あり」という評が多かった。

石破氏は長い「冬の時代」、「人間改造」を心掛け、「理詰め」を超克したのか、それとも「理詰め」を逆手に取ってそれを政治生命維持の武器にしてきたのか、その点は今も不明だが、思いがけず「春」がやってきた。

2023年秋、「派閥とカネ」の問題で、自民党が沈没寸前の漂流政党に落ち込むという大危機に直面する。病根は派閥政治だから、派閥を解散して無派閥に転じていた石破氏は好機を手にした。奇跡的にワンチャンスをものにして政権の座に到達したのである。

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