原油価格、まさかの1バレル=50ドル台はあるのか 中東情勢不透明でも今後の需給は緩むばかり?
一方、中国経済の見通しについては、さらに深刻だ。9月14日に発表された同国の8月の工業生産は前年比4.5%の増加と、予想を下回る伸びにとどまった。生産の伸びは4カ月連続で前月を下回っており、これは2021年以来の長さだ。同時に発表された8月の小売売上高も、前年比で2.1%と前月から伸びが鈍化、市場予想も大きく下回った。
国際エネルギー機関(IEA)は9月12日に発表した月報で、2024年の世界石油需要の伸びを、前年比で日量90.3万バレルと推定。従来の97.0万バレルから下方修正した。また、2024年上半期実績(需要の伸び)は日量80万バレルと、前年同期の約3分の1にとどまったという。IEAはこうした需要低迷には、中国の景気減速が背景にあると指摘。EV(電気自動車)の普及が極めて速いペースで進んでいることも大きいとしている。
中国当局も手をこまぬいているわけではない。当局は9月24日に預金準備率の引き下げなどの追加金融緩和や株価対策、さらには住宅頭金比率の引き下げなど不動産対策も含めた大規模な景気刺激策を発表。懸命に経済を浮上させようとしている。
OPECプラスの「減産縮小開始先送り」でも市場低迷?
もちろん、世界の石油需給は需要の動向だけで決まるわけではない。OPEC(石油輸出国機構)と有力産油国で組織するOPECプラスは9月5日、10月初めから計画してきた減産幅縮小を2カ月間先送りすることで合意した。
OPECプラスは一部産油国の自主的な減産も含め、これまでは日量200万バレル(1日の世界需要の約2%)の減産を継続していた。だが、6月初めに開かれた会合では、これを10月から段階的に縮小、実質的な増産に踏み切ることを明らかにしていた。
だが、市場の不安をいたずらにあおららないよう、各加盟国の割り当ても含めて、段階的な減産縮小の計画についてかなり詳細まで公表していたはずだったが、相場が回復しないことで、あっさりと先送りせざるをえなくなってしまったことになる。
さらに問題が深刻なのは、減産縮小開始の先送りに対する市場の反応が限定的なものにとどまり、先送り発表後に一時相場が下げ幅を拡大したことだ。
9月10日に65ドル台まで一気に値を崩したWTI原油相場は、その後はアメリカのルイジアナ州に上陸したハリケーン「フランシーヌ」の影響によってメキシコ湾の石油生産が4割強減少したことを手掛かりに70ドル台まで反発。FRBの利下げも追い風となった。それでもいまのところは底値固めから本格的に反発に転じたという兆候は見られない。
もしOPECプラスが現在の減産を継続するなら、確かに需給もある程度は引き締まった状態が維持される可能性が高そうだ。だが、現状では米中で金融緩和が行われていても、それ以上に需要の落ち込みに対する懸念が強いということなのだろう。
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