ウォルズ氏は、今のアメリカではめずらしい「叩き上げタイプ」である。ネブラスカ州の生まれで、地元の州立大学を出て高校教師になった。陸軍州兵として長く務めているが、退職時の肩書が「曹長」だったというから、組織内で出世を遂げたわけでもない。念のために申し添えると、勲章はたくさんもらっているので真面目な兵士だったようだ。
妻の実家であるミネソタ州に移り住み、そこでも高校教師を務める。そこで高校のアメフトチームのコーチになったところ、チームは同校初の州大会出場を果たし、地元の人気者になっていく。そして、地域のボランティアから政治の世界へという古風なコースを歩んでいく。
2006年、ウォルズ氏はミネソタ州第1選挙区から下院議員選挙に出馬する。共和党が強い選挙区だったから、民主党の予備選挙に手を挙げたのは1人だけだった。そこで見事に共和党の現職を破って当選し、以後、6期連続で下院議員を務める。
2017年には民主党現職のマーク・デイトン州知事の引退に伴い、その後釜となって州知事に当選する。現在2期目。今では全国民主党知事会の会長も務めている。いやもう、高学歴でないと偉くなれない昨今のアメリカ社会において、「いい人パワー」だけでここまでのし上がったのだから、まことに稀有なキャリアと言うべきである。
ウォルズ氏、今年の大統領選挙でトランプ&ヴァンスのコンビを”Weird”(変なヤツ)と呼んだことが妙にヒットして、それが民主党側の反撃のきっかけになったりもしている。真面目な話、トランプ氏としては「アイツは民主主義の敵だ!」などと嫌われるのは平気の平左だが、「変なヤツ」とか「キモイ」と呼ばれるのがどうにも我慢がならないらしい。
「孤高のインテリ」対「ご近所のおっさん」の対決
さて、こんな対照的な副大統領候補が、10月1日はテレビ討論会で激突する。「孤高のインテリ」対「ご近所のおっさん」の対決やいかに。特に重要なのは、選挙の焦点たるラストベルトの白人ブルーカラー層にとって、どちらがより説得力があるかという点だ。
トランプ対ハリスの「五分と五分」の戦いは、意外にも副大統領候補で明暗を分けるのかもしれない(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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