1社で原材料製造「抗菌薬・脱中国依存」の高い壁 Meiji・塩野義が国産化目指すも、課題は低薬価
手術後の細菌感染の予防や、感染症治療で用いられる抗菌薬。極めて重要な医薬品だが、製造サプライチェーンは、中国に依存した実にもろい状態の上に成り立っている。
「セファゾリンの供給不足が起こった2019年から今に至るまで、抗菌薬が安心して使える状態になったことはない」。東京ベイ・浦安市川医療センターで、感染制御認定薬剤師として働く並木孝哉氏は明かす。
19年2月末、後発医薬品大手の日医工が販売する注射用抗菌薬、セファゾリンナトリウムの供給が停止。同社が輸入する原薬での問題発生が原因だ。
ほぼ全量を海外製に依存
抗菌薬の製造は、主に原材料(出発物質)製造、原薬製造、製剤化の3工程からなる。日本では、原薬までのほぼ全量を安価な海外製に依存している。日医工は原薬をイタリアの2社から輸入していたが、18年末からその1社の原薬に異物混入が急増し、生産ができなくなった。
イタリアのもう1社からの原薬が頼みとなる中、この会社が中国企業から輸入する原材料の1つ、テトラゾール酢酸(TAA)の供給が途絶えた。TAAを製造しているのは実質的に中国のたった1社だけ。その工場が中国政府の環境規制に抵触し、稼働を停止したのだ。
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