フランス新首相の就任はEU瓦解への前奏曲だ 「民主主義を守る」戦争を止められないNATOとEUの限界

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こうして、西欧諸国家ではいつのまにか、自由と民主主義という表向きの標語が次第に剥げ落ち、実質的には国家の利益をたぐる組織が次第に実権を握るようになってきている。

これを一般には、ディープ・ステートというが、もはや政治的主権は国民から、一部の支配者のほうに移っているともいえるのだ。

もちろん、国民もその利益のおこぼれを得ることで、こうした主権譲渡を受け入れざるをえなくなっていることも確かだ。だから、戦争という負担を背負ってまでも、戦争支持の政権を支持しているのである。

しかし、利益のおこぼれのトリクル・ダウンはつねにあるとは限らない。むしろそうでない場合のほうが多いかもしれない。そうなると、それまで従属的だった国民も怒りをあらわにすることになる。

欧州議会選挙、イギリス下院選挙、フランス国民議会選挙、ドイツの州議会選挙などで、起こっている政権党への批判票は、こうした怒りの発露ともいえる。

過度な自由主義、国際化にうんざりする欧州

政権党は「極右の台頭」などと騒ぐが、欧州の国民が行きすぎた自由主義やグローバリゼーション、戦争にうんざりしていることは、紛れもない事実である。

民主主義と人権を守る戦いというイデオロギーなどよりも、胃の腑の欲望を満たすほうが、国民にとって重要であることは、当然である。政権党は民主主義と全体主義というイデオロギー闘争を前面に出しているが、国民にはそれ以上に日常生活のほうが大事になっているのである。

こうした結果、イギリス下院議会選挙では労働党が政権をとり、フランス国民議会選挙では、非政権党が多数を占め、ドイツ州議会選挙では軒並みAfD(ドイツのための選択肢党)が票を伸ばしている。

これらの政党は「戦争反対、移民反対」という公約を掲げている。移民も、欧州以外での戦争からもたらされた点では、戦争反対こそ問題の中心かもしれない。

その結果、政権が変わり、戦争終結、移民制限も間近に迫るはずであったのだが、いっこうにそうなる気配はない。それは、政権をたとえこれらの新しい党が握ったとしても、その背後にあるディープ・ステートが国民の意思を反映させないからだ。

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