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「共感できるストーリー」がない会社は滅びる あのナイキを脅かす肉食系社長の戦略とは?

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  • 岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
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ちなみに、Armourとは鎧のこと。アスリートという戦士がユニフォームの下に着ける鎧という意味だ。Nikeなどをエスタブリッシュメントとして印象付け、自らを「戦うブランド」として打ち出したことで、既存勢力に反抗的な若者の支持を獲得した。アメリカ人は聖書に出てくる「ダビデとゴライアス」(羊飼いダビデが巨人ゴライアスに勝つというもの)のストーリーが大好きなのだが、Under Armourは自らを小さな勇者が支配者に立ち向かい、勝利を収めるという王道ストーリーのヒーローにすることに成功した。

世界的ブランドがつぶやいていること

今、欧米ではこうした「ストーリー企業」が大躍進を遂げている。たとえば、世界的な日用品のブランド、ユニリーバ。CEOポール・ポールマンのTwitterアカウントを見てみると、「ビジネスのやり方を変えるべきだ。気候変動と戦おう」「われわれ人間は、われわれ自身のパワーに苦しめられている。人間が自然より力を持ってはいけない」など、環境や貧困といった社会問題に対する取り組みを呼びかける彼自身のツイートであふれている。まるで、環境NGO団体のアカウントのようだ。製品の宣伝などほとんどない。

ユニリーバは「10年で環境負荷を2分の1に、売り上げを2倍に」という野心的な目標を掲げ、企業の存在価値(レーゾンデートル)を、利潤追求から、環境や貧困など社会問題を解決するという方向にシフトさせている。ポールマンは「株主利益を優先する欧米流資本主義は機能しない」と言い切り、社会問題に目を向けるよう説いて回っている。そうしたスタンスに立って、傘下のスキンケアのDoveやアイスクリームのBen&Jerry’sなどは女性のエンパワーメントや環境問題など社会的イシューを啓発するキャンペーンを展開、大きな反響を呼んでいる。

最近、人気を失いつつあるマクドナルドに代わり、アメリカで最も人気のあるファストフードチェーンのひとつになっている、メキシコ料理のChipotle。抗生物質や添加物を使わない高品質の原材料を前面に出して、人気を博しているし、Chobaniはこれまで大量に使用されてきた甘ったるい人工甘味料を控え、自然の風味を大事にした添加物などを使わないヨーグルトで、大手メーカーを脅かす存在になっている。

消費者が一足買うごとに、途上国の子供に別の一足を贈る靴メーカーのTOMS、オーガニックフードのスーパーチェーンのWhole Foodsなど、今、注目を集める企業に共通するのは、「貧困」「環境問題」「食品添加物」などの社会的課題、つまり「悪者」をやっつける「スーパーヒーロー」としてのポジショニングに成功した企業であることだ。

地球の問題、地域の課題、人間としての悩みや苦しみなど、さまざまな問題に立ち向かう「戦士」の活躍するストーリーの文脈で会社は存在し、多くの人に支持され、共感される。

このように、企業は「モノやサービスを売る」時代から、「ストーリーを売る」時代に変わってきている。コーヒーを売るのではなく、サードプレースという居場所や顧客をハッピーにするハッピーな従業員を生み出すというこれまでにない常識と発想のコンセプトで、熱狂的な信者を増やしたスターバックスもストーリーテリングでビジネスを成功に導いた企業の代表格だ。創業者のハワードシュルツ氏の波瀾万丈の鉄板ストーリーを縦糸に、スターバックスのHPや社内でシェアされる顧客や従業員の「ストーリー」を横糸にして、絆が紡ぎ出され、愛着が芽生え、ある種のコミュニティが形成されていく。

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【TEDで反響を呼んだストーリーについての話】

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