『内P』復活で感じた「内村光良」後進育成の凄み 多くの芸人を復活・再ブレークさせた立役者

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この「ラ・ママ」時代の経験が、内村光良の後輩芸人プロデュースの原点にあるだろう。そして『内P』以外でも、内村光良のプロデュース力は発揮されてきた。

『新・ウンナンの気分は上々。〜NEW FEEL SO NICE』(TBSテレビ系)でのさまぁ~ずとくりぃむしちゅーの改名企画もそうだ。

もともとは「バカルディ」と名乗っていたさまぁ~ずと「海砂利水魚」と名乗っていたくりぃむしちゅーの対決企画。当初改名はPK対決や卓球対決の罰ゲームだったが、結局新しいコンビ名が世間に定着し、そのまま名乗ることになった。

これも番組自体が両コンビの見事なプロモーションになっていて、そのプロセス全体を臨機応変に仕切った内村光良のプロデュース力が光る。

内村光良がつくりだす「やさしい世界」

このケースからもわかるのは、内村光良のプロデュースには、芸人としての仲間感覚がベースにあるということである。

そこには、年齢も芸歴もあまり関係ない。芸人同士はライバルではあるが、根本的にはともに支え合う仲間だ。上下関係ではなく対等な関係。いわば、「やさしい世界」である。

それはとりも直さず、内村光良そのひとのやさしさから来るものだろう。面倒見の良い兄貴的存在であることは画面を通しても伝わってくる。しばしば「理想の上司」ランキングの上位にランクされるのも、そうした雰囲気が視聴者にも伝わっているからだろう。

言い換えれば、笑いを見る目の確かさがあるだけでなく、悩みを抱える後輩芸人への高い共感力がある。

それも「ラ・ママ」時代の自分の経験から、芸人が自分の個性を確立することの難しさをよく知っているからに違いない。そこから生まれる出演者全体の一体感が、内村光良がメインのバラエティ番組のほかにはない魅力だろう。

特にテレビバラエティは、集団芸である。信頼関係の確立された仲間のなかでこそ、それぞれの個性も輝きを増す。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)などを見てもそのことは明らかだろう。

そして内村光良の後進育成術は、有田哲平や有吉弘行らにきっちりと受け継がれている。たとえば、とにかく明るい安村が再ブレークするきっかけとなった『有吉の壁』(日本テレビ系)などには、内村イズムが強く感じられる。その意味でも、内村光良の功績は大きい。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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