誕生100年の都バス「利用者多い路線」はどこ? 鉄道網の空白地帯が健闘、でも実は8割が赤字

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「王40」系統は、池袋駅と東武スカイツリーラインの西新井駅をおおむね40分台で結ぶ路線。両駅間は鉄道だと最低1回の乗り換えが必要で運賃も400円を超えるが、バスなら直通で210円だ。

都バス 「王40」系統
夜の池袋駅東口で発車を待つ「王40」系統・西新井駅行き(記者撮影)

どんな路線なのだろうか。9月のある平日、夜の帰宅時間帯である19時台のバスに乗った。

同時間帯の池袋駅東口発は1時間に9本あり、6~8分おきと頻繁に走っている。停留所は長蛇の列で、バスは床が一段高くなった車内の後部まで立った客を乗せて出発。約20分後にJR京浜東北線の王子駅前(北区)に到着しても降りる客はなく、さらに多くの客を乗せて通路は満杯の状態に。

ようやく車内が空き始めたのは池袋から30分ほどの「豊島五丁目団地」。その名の通り、約5000戸があるUR都市機構の団地の前に位置するバス停だ。その後も立ち客の姿が消えることはなく、終点の西新井駅まで乗り通す人も少なくなかった。後部の座席で寝入っていた男性は「バスは座れれば楽ですよね」。鉄道では不便なルートを縫って走る、比較的長距離の利用者が多い通勤・通学の足といえそうだ。

西新井駅前 都バス 「王40」系統
西新井駅前に並ぶ「王40」系統のバス(記者撮影)

利用者多くても「儲かる」とは限らない

もう1つのドル箱路線「都07」系統も鉄道では乗り換えの必要な区間を結ぶが、こちらは途中でJR総武線の亀戸駅、都営地下鉄新宿線の西大島駅、東京メトロ東西線の東陽町駅・木場駅(いずれも江東区)と、複数の鉄道駅を「串刺し」にしている。

都バス 「都07」系統
錦糸町駅前と門前仲町を結ぶ「都07」系統(記者撮影)

都バス屈指の利用者数を誇るだけあって、便数は平日の日中でも1時間に8本以上と頻発している。

15時台の便は、座席がすべて埋まった状態で錦糸町駅前を発車。鉄道と乗り換えられる停留所を中心に乗り降りが多く、乗客は頻繁に入れ替わる。車内放送が流れる前に後者ボタンを押す人が目立ち、乗り慣れた地元客が多いことがうかがえる。門前仲町まで約30分、途中19カ所の停留所すべてで乗り降りがあり、通過した停留所は1つもなかった。

王40系統と都07系統、どちらも鉄道網の空隙を縫って走る地域住民の足だが、「儲かっている」のは都07系統のほうだ。1日の乗車料収入は309万円で、100円の収入を得るのに必要な支出を示す「営業係数」が78と、都バスの中でもトップクラス。一方、王40系統は乗車料収入こそ335万円と上回っているものの、営業係数はギリギリ黒字といえる96だ。

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