誕生100年の都バス「利用者多い路線」はどこ? 鉄道網の空白地帯が健闘、でも実は8割が赤字

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これは、系統によって支出額が異なり損益に差が出るためだ。支出は、全体の金額を年間の走行距離などで各系統に配分した額だという。年間の支出は王40系統が約13億5300万円なのに対し、都07系統は約9億9100万円だ。王40系統のほうが路線は長い。都交通局は「路線ごとの数値についてはケースバイケース」としたうえで、路線の長さや便数の多さなどによる経費の違いも「一因にはなりうる」とする。

都バス路線図 錦糸町駅周辺
錦糸町駅周辺の都バス路線図(記者撮影)

2022年度の系統別収支状況は「運行受託路線」を除く127系統が対象。都交通局によると、運行受託路線とは江東区からの委託を受けて運行している江東01系統・急行06系統の2系統だという。

この127系統のうち、営業係数が100未満の黒字路線は26系統のみ。実に8割は赤字という計算だ。都バスの看板路線的な存在である、渋谷駅前―新橋駅前間を結ぶ「都01」系統も営業係数は119。年間の赤字額は約1億4800万円だ。

都バス 「都01」系統
渋谷駅と新橋駅を結ぶ「都01」系統も赤字だ(記者撮影)

路線バスは以前から全国的に赤字が大半で、一部の黒字路線でその損失を埋め合わせてきたのが実情だ。日本バス協会の資料によると、30台以上のバスを保有する全国218のバス事業者のうち、黒字はわずか13事業者(データは2021年度)にとどまる。

都区内が中心の都バスであっても状況は厳しい。公営交通として採算性の低い路線も維持する役割を担っているとはいえ、2022年度は約17億8000万円の経常赤字だった。

「当たり前」に走るバスを維持できるか

全国でバス事業の厳しさに拍車をかけているのが人員不足だ。2024年4月からはドライバーの時間外労働時間の上限規制、いわゆる「2024年問題」の影響によって人繰りが困難になった各地のバス事業者が減便や路線廃止を余儀なくされている。

都交通局によると、都バスは「現状では、乗務員不足に伴う減便は行っていない」という。ただ、日ごろの運行で欠員が出た場合は「ほかの乗務員の時間外勤務や休日出勤により維持している状況」だ。

2023年12月に開かれた「都営交通の経営に関する有識者会議」第6回の資料によると、50代後半の乗務員が多く今後大量の退職が見込まれることなどから「中長期的には乗務員の確保が課題」としている。人材の確保はバス事業者に共通する大きな課題だ。

白い車体に黄緑とオレンジのカラーリングの都バス
白い車体に黄緑とオレンジのカラーリングの都バス(記者撮影)

日々当たり前のように多くの人々を乗せて走っている都バス。都心部で利用していると、まさか8割の路線が赤字だとは思わないかもしれない。だが、バスの苦境は過疎地や地方にとどまらず、都市部にも押し寄せている。都バスに限らず、「当たり前」の身近な足を今後も維持し続けるために何が求められるのか、バス事業者だけでなく利用者や社会全体で今まで以上に意識することが必要となってくるだろう。

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