はじめは乗り気じゃなかった男性も、見て見ぬフリをできる物量ではないことに気づいてはいたのだ。これだけ大きな屋敷では借り手もつかない。子どもに相続するとなったら、売りに出すしかないだろう。しかし、この残置物の量では娘に迷惑をかけてしまう。
「私の親父も整理したかったんじゃないか」
男性は運び出されていくモノたちを見ながらそう言った。しかし、片付けたくても片付ける術がなかったのではないか。それは、ゴミ屋敷清掃という職業が今ほど普及していなかったし、認知もされていなかったからだ。
世の中にゴミ屋敷が増えた理由
高齢化、単身世帯の増加、共働き夫婦の増加などによってゴミ屋敷清掃の需要は年々高まってきているが、二見氏によればそこにはもうひとつ大きな要因があったという。
「自治体によって時期は違うんですが、粗大ゴミの処分が有料化されたことでゴミ屋敷やモノ屋敷は一気に増えたはずです。昔は粗大ゴミの日にゴミ捨て場に出しておけば回収してくれましたが、今は自治体が指定するシールを購入して、貼って……と、工程が増えたうえにお金までかかるようになりました」
多忙で粗大ゴミを捨てる暇がない人もいれば、「手続き」というものが極端に苦手な人もいる。月々の支払いをつい先延ばしにし、口座振替の手続きも怠ってしまい、そのうち催促状が届き、それでも見なかったことにしてしまった経験はないだろうか。
そうして、粗大ゴミが捨てられなくなってしまった人が増え、ゴミ屋敷清掃の需要が高まった側面もあるのだ。
2日目の作業が終わり、ゴミとモノであふれた屋敷は見違えるようにスッキリした。
「ちょっと寂しいし、ほっとするし、昔のことを思い出す。どっちの感情もある」(男性)
3世代にわたって望んできた家の姿に、ようやく戻った瞬間だった。
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