子どものことばを育てるのに本当に必要なこと 「ことばのシャワーを浴びせる」のが正解ではない

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毎日あるイベントに比べて急に行動が切り替わるので予測はこちらのほうが難しいです。「いまから車に乗ってお買い物に行くよ」という声かけだけで理解ができて反応ができる子どももいれば、「いまから車に乗ってお買い物に行くよ」という声かけに合わせて、車の鍵を子どもに見せて、かつ玄関に意識を向けさせることではじめて「あ、いまからお外に出るんだ」と理解ができる子どももいます。

大人は「子どもにとってわかりやすい人」であるべき

この段階で子どものことばの理解を育てていく(状況の理解を育てていく)ためには、大人が「子どもにとってわかりやすい人であること」が望まれます。

これは決して難しいことではありません。予告もなく急に子どもの活動を制止したり(もちろん生命に関わるような事態なら話は別です)、相手の予測を裏切るような急な活動や行動の切り替えを強いたりするような場面をできる限り減らしていけばよいのです。子どもから見て「この人は何を考えているのかわかりにくい……」といった状況を少なくしましょう。

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もちろんこれは子どもに好き勝手させるわけではありません。少し意識するだけでいいんです。例えば保護者と子どもで外出をする際に、声かけをしながらいきなり手を引っ張る人であるのか、まず「外に出るよ」と声かけをしたうえで、本人に(外出のための)靴を見せて、玄関を意識させてから子どもと手をつないで外に出ようとする人であるのか。もちろん後者を推奨しています。

ざっくりとまとめると、「唐突な行動を避けて、活動が変わる際にはタメを作って(そのときに)本人がイメージしやすい目で見てわかるものを手がかりとしてその気にさせる」ことが重要です。

その気にさせている間に子どもは頭の中で次の活動をイメージできるようになっていくわけです。この活動や行動の見通しをつけていくことは、単に状況の理解を促進するだけではなくコミュニケーション面にも大きな影響を与えます。

子どもはわかりやすく次の活動や行動の手がかりを与える大人(の行動)に対して、しっかりと注意を向けるようになります。その注目が視線や表情などの非言語的なコミュニケーション手段の理解を促す土台となるわけです。さらに、その人に対する基本的な信頼関係があるからこそ「(その人の行動を)期待して待つ」といったこともできるようになります。

川﨑 聡大 立命館大学教授

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かわさき あきひろ / Akihiro Kawasaki

立命館大学教授。博士(医学)。公認心理師、言語聴覚士、臨床発達心理士。岡山大学卒業、兵庫教育大学大学院修士課程修了。療育センターで言語コミュニケーション指導にかかわった後、大学病院で言語・心理臨床に携わり、2006年岡山大学大学院医歯学総合研究科で博士課程を修了し、博士(医学)取得。岡山大学病院では発達障害から成人の高次脳機能障害の方の臨床に広く携わる。その後、富山大学、東北大学を経て2023年より現職。専門は言語聴覚障害学全般、神経心理学、ことばの発達に遅れがある子どもの指導。大学教員、研究者でありながら医療や療育の現場出身であることを活かし、発達神経心理や脳科学、特別支援教育を主に広く発信を続ける。

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