NPOも頑張る!「パラレルキャリア」のススメ 報酬目的ではない仕事が未来を拓く
私が最も共感したのは、TFTが社会課題をビジネスによって解決しようとする点でした。もちろんこのコラボ企画も単なる慈善事業ではなく、お弁当箱を売って収益を上げるというビジネスが成立しなければ意味がありません。
ですから参加する私たちも、ボランティアとはいえ、「この企画を絶対に実現させよう!」という高いモチベーションで取り組みました。メンバーは本業の仕事も忙しい人ばかりでしたが、出社前の時間などを使ってミーティングを重ね、企画書を作成し、お弁当箱を作ってくれそうな会社を50社以上リストアップし、みんなでテレアポをして……と、誰もが本当に熱意を持って動き回りました。
ところが電話やメールでアプローチをしても、なかなか製造を引き受けてくれる会社が見つからない。そこで私は、ある会社に飛び込みで営業をかけました。いきなり訪ねて行って、「アフリカに給食を届けるために、一緒にお弁当箱を作ってください!」と頭を下げたのです。
さすがにその場では不審な人間だと思われたらしく(笑)、相手にしてもらえませんでしたが、帰りの車の中でその会社の方から電話がかかってきて。企画書を読んでくださったとのことで、「私たちもこういう仕事がしたかった、ぜひ一緒にやりましょう!」と言ってくださったのです。こうしてTFTオリジナルのお弁当箱が完成し、店頭で販売された時は感慨もひとしおでした。
同じ志を持つ仲間との出会いが情熱を絶やさなかった
これを機に、その後2年間ほどボランティアとしてTFTの活動に関わりました。このパラレルキャリアを通じて得たものや学んだことはたくさんあります。まずは、「どうすれば人を巻き込んで成果を上げられるか」を意識するようになったこと。
会社の中では、何か指示されればたいていの人は動いてくれますが、ボランティア活動ではそうはいきません。ですからつねに「相手がどこにモチベーションを感じるか」を意識し、みんなで同じ方向に向かうために目指すゴールを共有するよう心掛けました。その後、入社7年目に会社でアシスタントマネジャーになりましたが、早い時期から人を巻き込んで成果を上げるという意識を持てたことは、本業でリーダー的な役割を果たす際にも非常に役立ちました。
そして何より大きかったのは、同じ志を持つ人たちとの出会い。「社会をよりよくしたい」という思いで頑張っている人たちとつながれたことで、私も情熱を絶やさずにいられたと感じています。
実は今年、大きなキャリアチェンジをしました。日産自動車を退職し、TFTで社員として働き始めたのです。きっかけは、産休・育休を取得し、約1年間仕事から離れたこと。この間に改めて「自分は誰のために働きたいのか」を考えた時、「世界の子どもたちを笑顔にしたい」という自分の軸がはっきり見えてきたのです。さらには、これから育児をしていく中で、わが子に「やりたいことを思い切りやって生きなさい」と伝えていきたいとも思うようになりました。そのためには、私自身が「やりたいことを思い切りやっている」と自信を持って言える生き方をしなくてはいけない。だったら、そのために行動すべきではないか。そう考えたのです。