守るべきは、雇用と個人企業に近い小企業である。失業、とりわけ若年層の失業は、経済的にだけでなく社会的に損失が大きいため、何としても守る必要がある。だから景気対策は、要は失業対策なのである。
第3のカテゴリーは、政策論争で最も華やかな、いわゆる「成長戦略」である。さらに第4のカテゴリーは、実はまったく日本では議論されることはないが、経済に対する考え方を変え、経済の構造そのものを変えることを意図する経済政策である。これは最後に議論することにしよう。
まず、第1のカテゴリー、バラまきは経済政策ではない。有権者のうち誰をターゲットとするかという選挙戦略政策であり、経済とは無縁だ。しかし、昨今の経済対策とはほとんどがこのカテゴリーに入ってしまう。物価対策もガソリン対策を中心に明らかにそうである。子育て支援もこれに入る。
財政再建と経済成長は「二者択一」ではない
そうすると、第2の景気対策が重要な政策の争点になりそうに見えるが、現実にはそうではない。なぜなら、現在、景気対策が必要かどうか、どれほど大規模なものが必要かどうかという点は、政治的なイシュー(論点)ではなく、純粋に技術的なエコノミストの判断に依存する。
現在のデフレギャップがいくらあるかなどはエコノミスト間では論争するべき問題であるが、政治家により公約として論争されるものではない。必要な景気対策はやるということであり、それは論点にならない。
この点でよく論点として挙げられるのが、「財政再建か、経済成長か」というもので、究極の選択を政治家(あるいは論戦相手)に突きつけて喜ぶ人々がいる。この論点を設定する時点で、財政再建は後回しですべては経済成長からという主張をして、究極の選択のように論戦を挑み、「財政再建も重要だ」とでも言おうものなら、「財務省の回し者」とレッテルを貼り、国賊扱いをする戦法なのである。
この小賢しさはともかく、この論点の設定は無意味である。なぜなら、そもそも財政と経済成長は二者択一でなく、別の論点であり、どっちが重要という問題ではなく、どちらも考慮せざるをえないのである。財政再建に関しては、どのような手段でどのくらいのペース、時間的な目標でというのは議論すべきことであるが、テクニカルな戦術問題であり(後回しという無視戦術も含めて)、経済成長戦略はそれとは別個に議論するべきものである。
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