エネルギー基本計画は「再エネ第一」に組み替えを 蓄電池と国産水素で、変動性再エネの弱点克服
最後に、③の場所の制約(統合費用のうち、「グリッド費用」の発生源)に対する技術的対策としては、地理空間情報やシミュレーションを用いた再エネ適地の正確な選定や、再エネ適地に関するポジティブ・ゾーニングと統合した送電網計画、許認可の合理化による取引費用の低下などが挙げられる。
以上の技術的対策にかかる統合費用を抑えるうえで、中でも非常に大きな役割を果たすのが、蓄電池である。下の図のとおり、世界の蓄電池市場は過去10年間で40倍以上という爆発的な拡大を果たし、2023年には年間導入量が40ギガワットに達した。その間にコストは4分の1未満に低下している。
電力システムの「柔軟性(Flexibility)」こそ重要
以上を「技術的対策」と呼ぶと、日本語の語感ではハードウェアによる対策のイメージが強い。しかし実際には、種々の制度改革や、企業・人々の行動変容を促すインセンティブの導入など、ソフト面での対策も非常に重要だ。
ハード、ソフト両面の対策が融合し、協調することで電力システムの「柔軟性」を高められる。再エネが増えるタイミングで他の電源の出力を下げたり、逆に需要側を引き上げて余剰再エネを消費したり、さらには余った再エネを蓄電したりして、システムコストを引き下げつつ電力需給バランスを保つことができる。
そうした柔軟性を機能させ、電力需給のバランスを促すシグナルとなるのが、電力市場の価格である。
再エネが増えて電力が余るタイミングで市場価格は下がる。小売価格を市場価格と一定程度相関して設定(リアルタイム・プライシングやTOU契約など)することによって、経済合理的に考える企業であれば、安価な時間帯に操業することで、電力コストを引き下げるだろう。
家庭も同じだ。屋根に付けた太陽光パネルで発電した電気を自家消費するか、備え付けの蓄電池やEVで充電するか、それとも売電するか、小売価格を見ながら最も得になるオプションを選択する。